高校の一大イベント・体育祭。本番や練習で、熱中症に倒れた生徒が集団搬送された例もあり、注意が必要だ。救命救急医の清水敬樹先生(多摩総合医療センター)に、体育祭での熱中症対策を聞いた。(木和田志乃)

体育祭で熱中症になり集団搬送

体育祭の時期になると、毎年のように熱中症が話題になる。体育祭やその練習中に生徒が熱中症で倒れ、集団搬送されるケースもあり、十分な注意が必要だ。

体育祭の時期は、本番や練習など、多くの生徒が屋外で活動する機会が増える。清水先生は、体育祭で特に注意が必要なのは「普段あまり運動をしていない生徒」だと指摘する。暑さに慣れていない状態で急に体を動かすと、長時間の活動に体が対応しきれず、熱中症を引き起こしやすくなる。

毎年のように体育祭での熱中症が報じられている

教師側の正しい知識が重要

熱中症を防ぐには、指導者が正しい知識を持つことが欠かせない。「体育祭では、普段スポーツに携わっていない教師が指導にあたることも多く、熱中症への理解が十分でない場合もあります」

こうした課題を踏まえ、文部科学省では近年、対応のためのガイドラインを整備している。天気予報や自治体の情報だけに頼らず、学校でもWBGT(暑さ指数)を計測し、体育祭やその練習の実施・中止を判断するのが大切だ。教師が正確な知識と現場の状況をもとに、生徒の様子に目を配ることが、予防の第一歩となる。

休憩しやすい環境を整備して

熱中症から回復した生徒の中には、「暑くてたまらなかったのに、休めなかった」と振り返る例もある。「30分に1回、あるいは1時間に1回、定期的に休憩を取るのが大切です」。体育祭は長時間に及ぶこともあるため、日陰など休憩しやすい場所をあらかじめ確保しておくことも重要だ。加えて、こまめな水分補給によって脱水を防ぐことも忘れてはならない。

休憩しやすい場所を確保しておこう

着替えを用意しておこう

衣服の選び方によって、できるだけ快適に過ごせるよう工夫できる。「通気性のよい半袖や、首まわりにゆとりのある服を選ぶのが望ましいです」。汗でぬれた衣類は風通しが悪くなり、体の熱がこもりやすくなるため、体温が下がりにくくなる恐れがある。「乾いた服に着替えることで、汗の蒸発が促され、気化熱によって体温の調節がしやすくなります。着替えを用意しておくと安心です」

そのほかにも、帽子をかぶったり日傘を使ったりして、強い日差しを避ける工夫も効果がある。「直射日光を避けることも、熱中症の予防に役立ちます」 

清水敬樹先生(多摩総合医療センター)

しみず・けいき 東京都立多摩総合医療センター・救命救急センター部長。熱中症や救急救命治療などに専門的に携わる。