松本美須々ケ丘高校(長野)演劇部は、第49回全国高校総合文化祭(かがわ総文祭2025)の演劇部門で、最優秀賞となる文部科学大臣賞を受賞。優秀校東京公演で上演した。日本一になるまでに、どんな練習を重ねたのか聞いた。(中田宗孝)
基礎練で「芝居への気持ち」を整える
ウオーミングアップとして、発声や筋トレといった基礎練習を行い、「心を整える時間」としても活用している。
「うちは部員同士がすごく仲良くて、練習前からワイワイ騒がしい(笑)。でも、アップをやり始めたら『さあ!』って、気持ちが切り替わります」(荻澤杏さん・3年)。「そこからはピシッとね。私自身、アップの時間帯に芝居への気持ちをしっかり作って、稽古に入るようにしてました」(部長の吉澤美杜さん・3年)

先輩をじっくり観察して演技力伸ばす
荻澤さんも吉澤さんも、高校から演劇を始めた。顧問の先生や先輩からの指導以外に、どのように演技を学んだのか。
「先輩たちの見よう見まねです。1年生のころはチョイ役で出番も短い。そのときに舞台袖で先輩の演技をじっくり見てました」(吉澤さん)。「先輩のせりふも意外と覚えちゃうんです。言い回し方をまねてみたり」(荻澤さん)
せりふを発する「間」を参考にしたり、先輩は感情をどう動かすのかと研究したりした。「先輩をまねていた1年生部員が、うちの部では演技力を伸ばしていったと感じています」(吉澤さん)

「部の空気感」が作品を左右する
作品の出来栄えを大きく左右するのは、「部の空気感」だと考えている。「役者がいて、音響や照明がいて。演劇は絶対に部員一人じゃ作れない。だから部内の良い雰囲気づくりはとても大切」(吉澤さん)
部員間の仲の良さが強みの同部。だが、活動中には、部員に端を発した問題も時折起こる。「それは部員個人の悩みだったり、稽古の進め方に不満を抱く部員がいたり、部全体がゆるんでる日も。いろいろです(苦笑)」(吉澤さん)

「安心感をくれた」部長の気配り
対処法は、さまざま。「一対一での話し合いもあれば、顧問の先生を交える場合や、稽古後に時間を設けて全体に伝える時もあります」(吉澤さん)
吉澤さんの細かい気配りや目配りにより、円滑な人間関係の中、稽古に集中できる環境が作られた。荻澤さんは、「部長は部員一人一人を見守っていました。私たちに安心感を与えてくれた存在」とねぎらう。

掛け声をかけて舞台に立つ
関東大会や全国大会の大きな舞台にともなう緊張や不安を、部は「笑い」で吹き飛ばしてきた。「私たちって、楽屋でめちゃめちゃ笑ってるんです。部員が互いに笑わせ合って。本当に今から全国なのかってくらい、リラックスした雰囲気が作れてたんです」(吉澤さん)
本番3分前。お決まりの掛け声「絶対にぃ~成功させようね~。イエーイ~!」を叫んで彼らは舞台へと向かっている。
全国高校総文祭で最優秀賞を受賞した作品「愛を語らない」(作・郷原玲)は、NHKEテレ「青春舞台2025 大会ダイジェスト&最優秀賞公演」で10月13日(月)0:45~2:44(12日深夜)に放送予定だ。9月24日(水)21:30~21:59にはドキュメンタリーが放送される。
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松本美須々ケ丘高校演劇部
創部年不明。部員20⼈(3年生9人、2年生3人、1年生8人)。活動は週5日。演劇部の全国大会にあたる「総文祭」演劇部門には、これまで2回出場を果たし、最優秀賞1回、優秀賞1回それぞれ受賞。