城東高校(徳島)演劇部は、第48回全国高校総合文化祭(清流の国ぎふ総文2024)の演劇部門で、史上二度目、2年連続となる文部科学大臣賞を受賞した。上演した「その50分」(作・よしだあきひろ)では、不穏が迫るクラスの日常を描き、鬼気迫る演技で会場をとりこにした。(中田宗孝、椎木里咲)
不穏な気配が漂う
作品は、文化祭企画と体育祭のダンス練習を同時進行で取り組む「クラスの日常」を描く。旗を制作したりダンス練習に興じたりと、クラス中がてんやわんや。クラスメートたちは、模試の判定結果を労いあい、片思い中の男子をイジるなど、各々が楽しそうに催しの準備の最中にいる。しかし1人の女子生徒の厳しいダンス指導に次々音を上げ、彼らの間に溝が生じはじめる。
作品を通してクラスメートらは「国家防衛の議論」を白熱させたり、世界で紛争が起きていることを匂わせる。せりふの節々から、観客は不穏な気配を察する。
観客から見えない位置でも演技する
巧みに練られた脚本は、各部員の普段の人柄を役に盛り込んだ「当て書き」で書かれた。「役をつかみ演技を磨くために、私たちは自分と向き合うことを意識してきました」(田中相綸さん・3年)。役者として出演し、演出も担当した石橋啓輔さん(3年)は、こだわりの演出箇所として「観客から見えない場所での演技」を挙げる。
「(学校の廊下が物語の主な場所のため)客席からは教室内がほぼ見えません。ですが、役者たちは教室の中にいても演技を続けています」
「楽しむこと」をモットーに上演
演劇部門での2年連続日本一は、史上2校目の快挙だ。「その50分」は県大会から上演している作品で、取り組み始めたのは去年の10月末ごろ。「連覇をしたことももちろんですが、みんなで長い期間をかけて作ったものが認められたことが何よりうれしかった」と石橋さんは言う。
部のモットーは「どの公演でもお客さんを楽しませ、自分たちも楽しむ」こと。連覇がかかるプレッシャーに押しつぶされることはなく、「いい作品を作ろう!」という気持ちの方が強かった。「先輩たちの代から本気で演劇に向き合い、楽しむことを何より心掛けています」(石橋さん)