第47回全国高校総合文化祭(2023かごしま総文)演劇部門で日本一となる文部科学大臣賞を受賞した、城東高校(徳島)演劇部。「戦争」をテーマに掲げた作品「21人いる!」(作・よしだあきひろ)を上演し、迫力の演技で観客をとりこにした。(文・椎木里咲)

「戦時下の演劇部」を描いた

「21人いる!」は、「現在または少し先の未来の戦時下」を舞台に、地下室を拠点に活動する演劇部の物語。部員が命がけの「ボランティア」に召集される。戦地へ派遣されていくような描写があったり、爆撃に巻き込まれて命を落としたりと、緊張感あふれるシーンが続く。

優秀校東京公演で披露した「21人いる!」の一幕(主催者提供)

浅野碧巴(あおとも)さん(3年、本作制作時の部長)が目指したのは、観客に「本当にその世界があるんじゃないか」と信じ込ませること。そのために意識したのが、まずは役者が「周りを信じ込むこと」だという。

「セットの地下室はもちろん本物の地下室じゃない。でもここは『地下室』で、私たちは閉じ込められていて、地下室の外では戦争が起きていて……っていうことを信じ込む。役者の共通の課題として、練習の時に意識していました」

左から顧問の吉田晃弘先生、小山さん、浅野さん、林さん(写真・椎木里咲)

戦争は身近にある

小山明日香さん(3年、本作制作時の副部長)は、脚本を最初に読んだとき、「『戦争』というテーマを身近なものだと感じなかった」という。しかし練習を重ねるにつれて「ひょっとしたら、明日から自分の演劇部生活もこうなるかもしれない。『戦争』は自分たちが知らないだけで、実は身近な存在なんだっていうことがだんだん分かってきました」と心境の変化を語った。

自分が演じないシーンの練習にも参加した。「思ったことがあれば役者や演出に意見を出したり、役者からも『次はこういう演技に挑戦するから見ていてほしい』と言ったり。みんなで意見を出し合って、どんどんブラッシュアップしていきました」(現部長の林はなさん・2年)

初の高校日本一に

「どのシーンもパワーのある、意味のあるシーン」だと話す浅野さんは、「最初に脚本を読んだ時に『これを最高の形にしよう』と決めていた」と力強く語った。その言葉通り、昨年12月の四国地区高校演劇研究大会で全国大会出場を決めると、今年7月から8月にかけて行われた全国大会では日本一となる文部科学大臣賞を受賞。8月に行われた優秀校東京公演にも初めて出演し、上演後には割れんばかりの拍手を浴びた。

城東高校演劇部

部員34人(3年生10人、2年生12人、1年生12人)。全国高校総合文化祭には5回目の出場。優秀賞以上の入賞、優秀校東京公演出場は今回が初。