今年で13回目を迎えたお弁当甲子園(主催:鎌倉女子大学)。今回は全国307の高校から11,269作品の応募があり、校数・作品数ともに過去最多となった。最終審査会の結果、上位に入賞した作品を紹介する。
最優秀賞 木下 大悟さん(愛媛県立松山南高等学校2年)
「癌に負けなかった父」へ 「男と男の約束弁当」
1年前、父が進行性の大腸癌と診断されました。今まで、1度も入院したことのない、健康だった父。でも、父は癌に屈せず、「来年も、再来年もずっと家族で桜を見よう!」と言ってくれ、僕自身も父に「必ず自分の夢を叶える!」と固く握手を交わし、約束をしました。今回、そんな父の為にお弁当を作りました。好きな食べ物から食べる派の父。おにぎりは、具が分かるように工夫し、卵焼きは、以前父が作ってくれたものを真似ました。卵よりもネギがたっぷりでとても美味しかったからです。花より団子の我が家。普通はお弁当に入れない「おはぎ」を入れて、父の喜ぶ顔を想像しました。僕の作ったお弁当を持って、必ず来年も家族で桜を見に行きます!
【受賞者コメント】
この度は、最優秀賞に選出していただき、本当にありがとうございました。昨年、入選を受賞し、表彰式に出席した時、父は入院中でした。必ず来年の表彰式には、父を連れて行きたい!という思いで、お弁当甲子園に取り組みました。
お弁当は、お腹だけではなく、心までも満たされる、大切な贈り物だと気付きました。今回は、縁起物の鯛や、父との思い出の卵焼き、家族の好きなおはぎを入れた、沢山の思いやりが詰まったお弁当です。彩りや栄養を考えて完成させたお弁当を、父が美味しそうに食べてくれたこと、一生忘れません。
昨年度、入賞が分かった時、父は手術の直前でした。その時、交わした父との約束を忘れずにいよう!という想いから、このお弁当を考えました。愛媛の県魚である鯛を使ったり、父が作ってくれた卵焼きを思い出しながら作ったりしました。彩りを考えながら作る事で、見た目も華やかになるように、おかずの配置も気をつけました。
入退院前後は、食べ物の制限もあったりして、本当に苦しかったと思います。でも、今は制限も無く、何でも食べられるので、父の好きな物をお弁当に詰め込んであげることができ、本当に良かったです。
お弁当甲子園に挑戦する前、僕にとってお弁当は、「お腹を満たすためのもの」でした。しかし、自分でお弁当を作ると、そうではなかったと気付きました。
「健康でいて欲しい」「笑顔になって欲しい」「幸せを祈っている」色々な想いが、込み上げました。小さな箱の中には、沢山の思いやりが詰まっていたのです。
栄養バランスを考えたり、彩りを気をつけたり、細かく詰め込むことが難しかったです。父が本当に喜んでくれて、僕の想いが伝わって、すごく嬉しかったです。
特別審査員賞 熊川 陽登さん(群馬県立沼田高等学校1年)
「姉と妹」へ 「ハンバーグ弁当」
夏休み中、私は両親が仕事でいないのと、姉妹との仲も良くないためお昼ごはんは一人で食べることが多いです。そんな中、前日にあまり話すことのない妹がハンバーグを作ってとおねがいしてきました。私も最初は面倒くさかったのですが、なぜかその気になりお母さんにひき肉を買ってきてとおねがいしました。ハンバーグを作る当日になり、いざ始めようと思ったら、玉ねぎはないや作り方が分からないやで30分ほどたっていました。いざ作り始めても分量が分からず、ずっとハンバーグ作りのサイトを見てるだけでした。なんとか作り終わり、妹に食べてもらったら「おいしい」と好評でした。一つの弁当で妹との仲が縮まり食べ物ってすごいんだなと思いました。
【受賞者コメント】
この度はこのような賞を受賞することができてとても光栄です。正直自分が受賞できるなんて思ってもいなかったため、結果を先生に教えてもらった時、「え?俺ですか?」と聞き返してしまいました。
今回お弁当を作ろうとしたら、味の濃すぎや、バランスが悪いなどのたくさんの反省が出てきました。全て自分で作ろうとするだけで、こんなにも多くの反省が出てきてる所から、見た目以上に難しいんだなと思いました。
このお弁当は、夏休みの家庭科の課題で作ったのですが、取り組んでみて、調理の手順と準備が足りなかったと感じました。いつも早起きしてお弁当を作ってくれるお母さんに感謝を伝えたいです。
特別審査員賞 田中 一葉さん(福岡県立東筑高等学校1年)
「歯を痛めた母」へ 「柔らか愛情弁当」
私が幼稚園生のとき、階段が怖くて2階から降りられなくなったことがありました。2階の物置部屋で泣いていたら、「もう大丈夫やけん階段を見てみて!」という声が1階から聞こえ、階段に来て見てみると、色紙を切って作った花が一段一段に散りばめられていました。恐る恐る降りた私を、母は頑張ったねと言って抱き締めてくれました。これが私が覚えている母の最初の記憶です。あくまで私一人で降りられるように手伝ってくれた母の行動を、私は今でも尊敬しています。そんな母が先日歯を痛め、何も食べる気が起きないと言っていたので作ったのがこの弁当です。あまり噛まなくていいように出来るだけ柔ら
かく、愛情を込めて作りました。
【受賞者コメント】
自分の作品が本当に受賞できると思っていなかったので、このような大きな賞をいただけてとても嬉しいです。誰かのためにお弁当を作るのは初めてで、どのおかずが喜んでもらえるか、どう作れば美味しく食べてもらえるかなどたくさんのことを考えて作りました。実際に自分で作ってみると思っていたより時間がかかり、小さなお弁当にも苦労が詰まっていることを知りました。今まで自分で料理する機会はあまりなかったけれど、これを機によりおいしいお弁当を作れるよう、少しずつ練習していこうと思います。
夏休みの課題の一つとしてお弁当制作があり、どんなお弁当を作ろうか悩んでいた時に、母が「歯が痛くて何も食べたくない」と言っているのを耳にしました。柔らかいおかずだけで作ったお弁当なら母も食べられるのではないか、そしていつもお弁当を作ってくれる母に日頃の感謝を伝えたいと思い、母へお弁当を作ることに決めました。
具材を煮込むとき、どの野菜を先に入れてどの野菜を後に入れるべきかの順番やタイミングが難しくて勉強になりました。今回はできる限り柔らかく煮込もうと思っていたので、具材の形が崩れず、口に入れるとほろっと崩れるような”ちょうどいい柔らかさ”を見極めるのも難しかったです。また、卵焼きの中に明太子を入れて作るのが初めてだったので巻くタイミングに苦労しました。でも卵焼きを切った断面がいつもより美味しそうだったので、入れてみて良かったと思いました。
優秀賞 惣田 健斗さん(北海道美幌高等学校3年)
「ともに酪農業に進む仲間」へ 「やるぞ、酪農弁当」
私の実家は北海道のオホーツクで酪農業を経営しています。ですが、地元の同学年や同世代では酪農を志す人が少なく、酪農の話で盛り上がることが少なかったです。そのため、高校は家から離れた農業科へ進学しました。そこでは、同じ夢を持つたくさんの人に出会いました。中には、非農家出身で、「私の家に行きたい!」という仲間もいました。酪農が大好きなみんなと、酪農を盛り上げていく。これからは、私たちが酪農を盛り上げていく。材料は北海道産を使用し、特に牛肉は乳牛で最も多いホルスタイン種のオスの肉を使いました。今、とても苦しい酪農業界ですが、これからの酪農を私たちが明るくする。そんな気持ちで作りました。
【受賞者コメント】
この度は、このような素晴らしい賞を受賞することができ、とても嬉しく思います。料理をすることが少ない私ですが、「酪農」や「北海道」という2つのことを表現を目標に試行錯誤しました。高校では、同じ志を持つたくさんの仲間と出会いました。そんな仲間と今までもこれからも酪農業界を盛り上げていきたいと思います。今回の受賞で料理にも自信をつけることができ、食材や栄養バランスを考えながら、日々の生活に生かしていきたいと思います。
現在、酪農業界では苦しい状況が続いています。そんな中、私は高校生活でたくさんの同じ志を持つ「仲間」と出会いました。その仲間とこれからの酪農業界を盛り上げていきたい。そんな気持ちでお弁当を作りました。
私は、料理の配置がとても難しかったです。見た目も彩りのある美しいお弁当を作るにはどの料理をどこに置くか、どこがベストなのかを考えながら行いました。
優秀賞 谷田部 真結さん(神奈川県・鎌倉女子大学高等部2年)
「ご飯を全然食べない成長期の弟」へ 「ドドン!「食べろ」と言わんばかりの顔をしている弁当」
弟は、成長期真っ只中の中学生で、しかも運動部なのでエネルギーを沢山使います!ですが…なかなか食べず好きな食べ物ばかり食べているので、栄養は取れないし、憎たらしいことに私よりも身長が高いのに私よりも痩せています。そんな弟に残したら罪悪感を抱くようなお弁当を作りました。2つのおにぎりは大きめに作りました。きっとおにぎりを食べている最中シャケとたらこが無くなり味の少し濃いつくねを食べると思います。そしてそこまで食べれば最後まで食べたいと思える量にしました。そして副菜を食べやすい豚汁にしました。豚汁の中にはお肉をたくさんとにんじん、大根、ごぼう、厚揚げ、さといも、ねぎを入れました。
【受賞者コメント】
この度は優秀賞に選出していただきましてありがとうございます。お弁当甲子園の作品を考えていた時はまさか受賞できると思わなかったので、受賞の報告を聞いた時は嬉しさと驚きでいっぱいになりました。このお弁当は題名の通り、弟に食べてもらいたい気持ちから作りました。弟は文句を言いながらも、残さず食べてくれたので頑張って作った甲斐がありました。このお弁当はたくさん時間をかけてやっと作ることができました。普段短い時間で美味しいお弁当を作ってくれる母には尊敬と感謝の気持ちでいっぱいです。
弟は成長期なのにご飯を少ししか食べません。身長は少しずつ伸びているものの、筋肉があまりつかないことが気になっていました。そんな弟のために、絶対に残したくなくなるお弁当を作ろうと考えました。そのために、弟が好きな鮭と明太子が可愛く目立つように工夫しました。
お弁当作りは同時進行の作業が多く、しかも隙間なく美味しそうに詰めるのはとても大変でした。また、今回のお弁当づくりを通じて食材選びもとても大事だと気付きました。
優秀賞 渡邊 葉月さん(神奈川県・横浜雙葉高等学校1年)
「仕事を頑張るお母さん」へ 「週末の冷蔵庫の余りもの弁当」
このコンクールに応募することを決め、何を作ろうと悩んでいたのですが、そんな時にお母さんがいつも「明日のお弁当どうしよう」と悩んでいたことを思い出し、「いつもお母さんがどんなことを考えながら作っているのか体験してみよう」と思い、何か買い出しに行くのではなく週末の1番冷蔵庫が空っぽの時に作る大変さを味わいました。例えばお弁当といえば彩りが大事ですがミニトマトなど手軽に赤を入れられるものがなく、考えて、今ある鶏むね肉ならピカタでケチャップをつけられるぞというように彩りを工夫しながら作りました。どれだけ忙しくてもおいしくて彩り豊かなお弁当を毎日私と父に作ってくれるお母さんには感謝の気持ちでいっぱいです。
【受賞者コメント】
この度はこのような素敵な賞にご選出くださりありがとうございます。まさか選んでいただけるとは思っていなかったので正直今でも信じられません。もっと丁寧にお弁当の写真を撮っておけばと後悔しています。お弁当を作るのは初めてではないのですが、今回のように冷蔵庫に前日の残り物がない状態で作るのは初めてだったので、応募時にも書いたのですが、彩りを考えるのが本当に大変でした。今回の作品を通して改めて毎日当たり前のように出てくる弁当はお母さんの努力と愛情の結晶だと分かったので今まで以上に味わって食べたいです。
今回このようなコンセプトでお弁当を作ったのは、正直に言ってしまえば買出しに行くのが面倒に感じてしまったのと、いつも冷蔵庫とにらめっこしながら明日のお弁当どうしようと悩んでいるお母さんの大変さを体験してみようと思ったからです。私から見てもその時の冷蔵庫、冷凍庫はともにかなり空っぽでいわゆる一週間分の買出しに行く直前の状態でした。その中でもかろうじて残っていた鶏むね肉と常備してある冷凍野菜だけで作ったのは今思い返してもかなりのチャレンジだったな…と感じます。
「お弁当甲子園」に取り組む中で私は改めてお母さんをはじめお弁当を作っているすべての人の偉大さを思い知りました。今回私は昼間、しかも夏休みという時間に余裕がある中で作りました。しかしよく考えれば学校に行く日は私の場合は七時、更に早く家を出る日もある中でしっかり時間通りにお弁当を作るのはたとえ前日にいろいろ準備していたとしても本当に大変なことだと感じました。また物価高でミニトマトなどのお弁当の材料が昔より気軽に買えなくなっていることも実感することができました。
優秀賞 澤田 大晴さん(愛知県立豊田工科高等学校1年)
「家族」へ 「集合弁当」
僕は幼稚園の時に母を亡くしました。そして、兄は仕事で遠くに行き姉は結婚して家を出ました。母に関してはあまり記憶になくどんなことをして一緒に過ごしたのかとても記憶が曖昧です。ですが母が亡くなってから1、2年は家族が荒れていたことを覚えています。僕は、お母さんの妹さんが僕の第二の母として沢山面倒を見てくれたり、学校に行く前のご飯は、お母さんの叔父と叔母がつくってくれてお父さんは、仕事に行く前に弁当をつくってくれます。そして兄と姉は、煽りながらも勉強をおしえてくれました。この弁当には全員が食べたことがある叔父と叔母のまね料理を入れました。母を入れてまたこの幸せな家族でご飯を食べたいと思いつくりました。
【受賞者コメント】
僕は受賞してとても嬉しく、作って良かったなと思いました。弁当を作る時に、中学までは弁当がなかったので何を作ればいいのか、どんな感じの弁当を作れば良いのか分からなかったので、食材を選ぶところから苦戦しました。ですが、家族などにも相談しながら作って、作り終わったあとはとても達成感があったので、受賞が決定した時は家族にすぐに受賞した話をしました。結果を聞いた時には、自分もすごく驚いたけど一番家族が驚いてました。
高校生になって初めての夏休みだったので、色々なことに挑戦したいなと思ったことや、弁当を食べるというのが高校生になって、これから日常になっていくというのが、その時は不思議な感じだったので親がどんな感じでこれまでも、これからも作っているのか知りたくて今回参加しました。
いつも弁当を作ってくれる親は、とてもすごいなと感じました。僕が作った時は1時間か2時間くらいかかってしまって、最初は本当に作れるのか心配でした。でもいつも親は、30分とかでどんどん作ってしまうのでとてもすごいなと感じました。今回の取り組みで、親の苦労に気付いたのでこれからも弁当は残さず食べようと思いました。
第13回お弁当甲子園入賞者
- 【最優秀賞】
- 木下 大悟(愛媛県立松山南高等学校2年)
- 【特別審査員賞】
- 熊川 陽登(群馬県立沼田高等学校1年)
- 田中 一葉(福岡県立東筑高等学校1年)
- 【優秀賞】
- 惣田 健斗(北海道美幌高等学校3年)
- 谷田部 真結(神奈川県・鎌倉女子大学高等部2年)
- 渡邊 葉月(神奈川県・横浜雙葉高等学校1年)
- 澤田 大晴(愛知県立豊田工科高等学校1年)
- 【入選】
- 村上 美莉(東京都・かえつ有明高等学校2年)
- 南村 拓(京都府立山城高等学校2年)
- 飯塚 粋(東京都立竹早高等学校2年)
- 岡村 美那(福岡県立東筑高等学校1年)
- 長澤 実咲(東京都・早稲田実業学校高等部2年)
- 片岡 泉(神奈川県・カリタス女子高等学校1年)
- 山之内 咲月(山形県・日本大学山形高等学校2年)
- 坪井 颯佑(群馬県立沼田高等学校1年)
- 横田 玲(兵庫県・雲雀丘学園高等学校2年)
- 千野 咲空(神奈川県・湘南学院高等学校3年)
- 【佳作】
- 山口 萌果(神奈川県立元石川高等学校3年)
- 渡邊 乃愛(神奈川県・慶應義塾湘南藤沢高等部1年)
- 山本 知佳(栃木県・白鷗大学足利高等学校1年)
- 西原 由珠(宮城県泉高等学校3年)
- 德田 太一(福岡県立東筑高等学校1年)
- 前田 心花(徳島県・徳島市立高等学校2年)
- 石澤 希尚(山形県・日本大学山形高等学校2年)
- 小林 由(三重県立四日市農芸高等学校2年)
- 飯田 絢香(大阪府立清水谷高等学校2年)
- 中込 和希(山梨県立甲府東高等学校3年)
- 深海 凛(京都府立山城高等学校2年)
- 塩山 来佳(岡山県立倉敷南高等学校2年)
- 西尾 日向(東京都・東京家政学院高等学校3年)
- 今中 美喜(兵庫県・雲雀丘学園高等学校2年)
- 須田 陽南(岡山県立西大寺高等学校3年)
- 【文部科学大臣賞】
- 群馬県立高崎女子高等学校
- 【学校賞】
- 東京都・早稲田実業学校高等部
- 山形県・日本大学山形高等学校
- 埼玉県・本庄東高等学校
- 【鎌倉女子大学賞】
- 神奈川県・湘南学院高等学校
- 福岡県立福岡高等学校
- 東京都・目黒日本大学高等学校