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審査委員長
鎌倉女子大学 家政学部長
大石 美佳 教授
最優秀賞 愛媛県立松山南高等学校
木下 大悟さん(2年)
「癌に負けなかった父」へ 「男と男の約束弁当」
木下大悟さん、最優秀賞おめでとうございます。
食べると元気をもらえそうな、それでいて優しさを感じさせてくれるお弁当だなというのが、写真をみたときの最初の印象でした。そこからお弁当に込められた想いを読ませていただき、お弁当がもつメッセージ性の強さに驚きました。言葉がなくても、気持ちが伝わってくるお弁当って素敵ですね。
さて、そんな素敵なお弁当の背景には、お父様との「男と男の約束」があったことを知りました。短い文章の中に、お父様の病気のこと、そこで交わされた約束、お父様の人となり、お父様との関係、お父様を想う気持ちが伝わってくるエピソードが綴られていました。
だからこのお弁当はこんなにも力強く、優しいのですね。
お父様との「男と男の約束」が叶うことを心より祈っています。

審査委員の皆様
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特別審査委員
阿部 了 (写真家)
ANA機内誌「翼の王国」人気No.1エッセイ「おべんとうの時間」著者。NHK「サラメシ」にてお弁当ハンターとして出演中
特別審査員賞 群馬県立沼田高等学校
熊川 陽登さん(1年)
「姉と妹」へ 「ハンバーグ弁当」
今どきのインスタ映えなんて関係無いと言わんばかりの弁当だ。ごはんの真っ白さに潔さを感じる。妙に嬉しさが込み上げて来たら腹が減って来た。まずはごはんだ。次にハンバーグをひと口。そしてピーマンとちくわの炒めものからのごはん。妄想が膨らむ。
本人いわく、姉妹との仲も良くなく、あまり話す事がないそうだ。その妹から、ハンバーグを作ってとお願いされて、最初は面倒くさかったそうだが、なぜかその気になり、なんとか作り、食べてもらったら、「おいしい」と言われたそうである。そして、ひとつの弁当で妹との仲が縮まり、食べ物ってすごいんだなと感じたそうである。
ある夏休み、今という時代の高校生の、ありのままの気持ちと情景が素直に伝わって来る。ショートムービーを見ているようでもあった。この弁当は、まさしく高校一年生、熊川君そのものだ。そこが弁当の面白さでもある。
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特別審査委員
阿部 直美(ライター)
ANA機内誌「翼の王国」人気No.1エッセイ「おべんとうの時間」著者。近著「おべんとうの時間がきらいだった」(岩波書店)
特別審査員賞 福岡県立東筑高等学校
田中 一葉さん(1年)
「歯を痛めた母」へ 「柔らか愛情弁当」
まずお弁当の写真で、ぐっと心を掴まれました。明太子が真ん中に見える卵焼きはちょっとしょっぱいのかな。それを一口つまんだ後は、甘いさつま芋を。そうしたら次は、いかにもすっぱそうな梅干しがいいな・・・想像の中で食べていました。それくらい、美味しそうでした。歯が痛いお母さんのため、柔らかく調理したお弁当ということですが、そういう発想になるところに、一葉さんの優しさを感じます。それにしても、お母さん素敵ですね。階段から降りられなくて泣いている幼い娘のため、階段に花を散りばめて「怖い場所」から「楽しい場所」に変えてしまうのですから。その記憶を今も大切にしている一葉さんは、きっと感受性豊かな女性なのだろう、と思いました。丁寧な詰め方にも、人柄を感じます。このお弁当を食べたお母さんは、歯痛だけど「嬉しい」気持ちで満たされたはず。どんなことも「いいこと」に変えてしまえるポジティブな母娘の魅力も、このお弁当から伝わってきました。

特別審査委員の阿部了さん・阿部直美さん
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審査委員
鎌倉女子大学 家政学部
髙橋 ひとみ 教授
優秀賞 北海道美幌高等学校
惣田 健斗さん(3年)
「ともに酪農業に進む仲間」へ 「やるぞ、酪農弁当」
角がある牛が、かわいらしく印象的なお弁当で、「やるぞ 酪農」というお弁当のタイトルから力強さを感じました。
このお弁当は、酪農業に進む仲間にむけて作られており、食材から北海道への愛を感じました。料理は、とうもろこしのかき揚げ、乳牛ホルスタイン種のオス肉の生姜焼きなどです。使用した肉にここまでの記載をした例は、なかったのではないかと思います。さすがです。
私たちは、豊かな食材に囲まれ、好きなものを選んで、毎日食べています。その豊かな食材は、農業、漁業、酪農畜産などに携わる多くの皆さんのおかげであり、食料自給率38%(カロリーベース)を支えてもらっています。しかし、ニュースからは一次産業就業者の高齢化や後継者不足の話が流れています。このお弁当に込められた高校生のあなたたちが、酪農業を盛り上げていくという意志が嬉しいです。がんばってください。
優秀賞 神奈川県・鎌倉女子大学高等部
谷田部 真結さん(2年)
「ご飯を全然食べない成長期の弟」へ 「ドドン!「食べろ」と言わんばかりの顔をしている弁当」
ちょっと唇の大きなインパクトのある顔のおにぎりが2つ並んでいる弁当、よく見ると唇は、たらこと鮭で、弁当のタイトルは『ドドン!「食べろ」と言わんばかりの顔をしている弁当』、この顔は、食べろと言わんばかりの顔なのかと納得しました。
メッセージもいろいろな伝え方があり、素直に直球で「好き、あなたを想っている」を伝える方法もあります。そして、このおにぎりに込められたメッセージは「残したら罪悪感を抱くように」と、かなりのツンデレで、食が細い弟さんに向けた深い愛情表現なのだと感じました。唇が大きな理由も先におにぎりの具の部分を食べてしまったら、おかずを食べて味を足さないといけないように仕組まれていて、その思いを知ると、この個性的な顔のおにぎりが愛おしく感じられるようになりました。
食の細い人にも食べ進めやすいように、おかずとして豚汁をつけた点など工夫され、思いやる気持ちにあふれたお弁当だと思います。
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審査委員
鎌倉女子大学 家政学部
山口 真由 准教授
優秀賞 神奈川県・横浜雙葉高等学校
渡邊 葉月さん(1年)
「仕事を頑張るお母さん」へ 「週末の冷蔵庫の余りもの弁当」
優秀賞受賞、おめでとうございます。
仕事を頑張るお母さんは日々「明日のお弁当、どうしよう」と悩んでいるとあります。おそらく仕事だけでなく、家族に対してもきちんと向き合い、日々頑張るお母さんなのでしょう。今回は買い物に行く暇もなく忙しい日々、冷蔵庫の余り物で作るという、いつものお母さんと同じ条件でお弁当を作るというミッション。そんな時にお弁当の赤代表のミニトマトが無い。それでも赤い調味料のケチャップから発想し主菜である鶏のピカタに着地するのはさすがです。赤・黄・緑・白・黒と5色の食材を組み合わせると彩りと共に栄養バランスも整いやすいと言われていますが、こちらのお弁当は見事にその5色が揃っています。卵焼きをハートに仕上げ、冷蔵庫の余り物とは思えない彩り豊かでおいしそうなお弁当になりました。お母さんの頑張りが娘さんにもきちんと伝わっている、そんなお弁当だと思いました。
優秀賞 愛知県立豊田工科高等学校
澤田 大晴さん(1年)
「家族」へ 「集合弁当」
優秀賞受賞、おめでとうございます。
お弁当は品数が豊富で、美しく詰められています。とても美味しそうですね。どれもそれほど手間のかからないおかずですが、これだけ多くの品を作って詰めたお弁当を見ると、叔母さんや叔父さん、お父さん、そしてお兄さんやお姉さんから大切に育てられ、日々豊かな食事をしていたことが伺えます。家族全員が食べたことのあるおかずを再現して詰めたのは、家族とのつながりを心の中で大切にしているからでしょうか。早くに亡くなったお母様や、今は別々に暮らす家族と一緒に食事をするという願い。『集合』することが叶わないと理解しつつも、家族の存在を強く求める切実な思いがお弁当や文章から伝わってきました。

審査風景