入試制度が多様化し、「年内入試」で進学を決める人が増えつつある時代。編集部に「大学には行きたいけれど、やりたいことが分からない」という声が寄せられた。そんな高3生が進路選びで注意すべき点について、進路指導アドバイザーの倉部史記さんに聞いた。(安永美穂)
通学可能な大学を検討
―3年生なのに「大学に進学したいが、やりたいことが分からず志望校が決まらない」「部活に明け暮れて進路選択まで考えられていない」という声を耳にします。そんな状態の受験生は、今から志望校や学部をどうやって決めればいいですか?
まずは通学可能な大学がどこかを考えましょう。学力や学費、通学距離を念頭にあたりをつけるとよいです。なお最初から「自宅から通える範囲で」と考える方は多いのですが、可能な限り広い範囲で探すことをオススメします。自分に合う大学が地元にあるとは限りません。学力も同様で、現役生はギリギリまで伸びますので、「現時点で確実に受かる」ことに過度にこだわらなくて良いと思います。伸びしろも考慮しましょう。
あたりをつけたら、通学可能な大学の大学案内を少なくとも5校、できれば10校分ほど取り寄せてください。興味を持った大学や学部があれば、大学のホームページでさらに詳しく調べてみましょう。「親や先生が薦めるから」「この学部ならつぶしがききそうだから」という理由だけで選ばず、学ぶ内容を吟味し、どこに行きたいかを自分自身で決めることが大切です。
ワクワクする学問かで選ぶ
―失敗しない進路選びのポイントを教えてください。
医療系や保育系などの分野では、卒業生のほぼ全員が専門職に就職するという学部や学科も少なくありません。事実上の職業選択ですので、入学後のミスマッチにつながらないよう、仕事の実情をよく調べておきましょう。その職業に就いている人の話を聞くなどして、自分の適性をよく考えてから選んでください。学校の先生に相談してみると、自身の目指す職業の先輩につなげてもらえるかもしれません。
一方、文理を問わず、大学の大半の学部では、必ずしも専門分野ばかりに就職しているわけではありません。卒業後の進路は多様です。でも「学ぶ内容についてワクワクする気持ちを持てるかどうか」は大事。ここが向き・不向きを判断する手がかりの一つになるはずです。
夏休み明けまでには志望校決定
―学校推薦型選抜や総合型選抜など、いわゆる「年内入試」の場合、いつまでに志望校を決めれば間に合いますか?
学校推薦型選抜のうち、指定校推薦を希望する場合は、高3の9月ごろに高校に意思を伝えるのが一般的です。公募推薦も、1校からの出願人数に限りがある場合は、指定校推薦と同じくらいの時期に校内選考が行われることが多いです。そのため、指定校推薦・公募推薦いずれの場合も、夏休み明けの時点では志望校を決めておく必要があります。
―総合型選抜は?
総合型選抜は9月から出願が始まりますが、大学・学部によっては9月以前のオープンキャンパスへの参加が出願条件となる場合もあります。志望理由書などの書類作成にも時間がかかることが多いです。できれば7月ごろまでには志望校を絞り込んで、出願条件やオープンキャンパスの日程などを確認したり、書類作成の準備を進めたりしておくとよいでしょう。
一般選抜の準備も並行して
―併願校は何校程度受ければよいのでしょうか?
一般選抜では5校以上受けることも珍しくありませんが、学校推薦型選抜や総合型選抜は「合格したら必ず入学するという条件」で出願する「専願」が多いため、実際に出願するのは1~2校というケースが多いようです。ただし、不合格になる可能性も考慮して、準備段階では2~3校程度、出願する可能性がある大学について調べておくとよいでしょう。
なお、年内入試で不合格だった場合、行きたい大学に一般選抜で再挑戦するという選択肢もあります。その場合にも慌てずにすむように、一般選抜で必要な科目の勉強は続けておくことをおすすめします。
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倉部史記(くらべ・しき)さん
進路指導アドバイザー、高大共創コーディネーター。追手門学院大学客員教授。高校生の「ミスマッチのない志望校選び」を支援するために、全国の高校での進路講演や高校・大学の教職員向け研修などを行う。著書『ミスマッチをなくす進路指導』(ぎょうせい)など。