高校生から、「休みの日には10時間以上寝てしまう」という悩みが寄せられた。週末に爆睡してしまうのは、平日の睡眠不足が原因かも。睡眠の専門医・下浦雄大先生に寝すぎは体に悪いのか聞いた。(文・黒澤真紀、監修・白濱龍太郎先生)

「寝すぎ」って病気?
高校生新聞の高校生読者に睡眠の悩みを聞いたところ、「休日に10時間以上寝てしまう日が毎週あります。最高で14時間寝た経験も……寝すぎが体に悪いのか心配」(高1)、「休日になると、毎回のように12時間近く眠ってしまいます」(高1)という声が寄せられた。眠りすぎてしまうのは病気なのだろうか?

「10時間以上」は注意
下浦先生によると、「高校生は、塾や部活動、課題の負担によって、必要な睡眠時間が十分に確保できていない状況が続いている」という。
2021年の経済協力開発機構(OECD)による調査によれば、日本人の平均睡眠時間は約7時間22分。調査対象国の中で最も短い水準だ。「明日は休みだ!」と、金曜の夜についつい夜更かしして寝る時間が遅くなれば、翌朝の起床も遅れ、週末に長い時間眠ってしまう流れが生まれる。繰り返すうちに不安定な睡眠リズムが定着し、だるさにつながってしまう。
「1日1時間不足した状態を5日間続けると5時間分の睡眠負債がたまります。睡眠負債とは、必要な睡眠時間に足りない分が少しずつ積み重なり、疲れや集中力の低下などに影響を与える状態です。週末に10時間以上眠る傾向は体が疲労を感じているサイン。睡眠環境や生活リズムを見直すきっかけにしましょう」
睡眠の状況を記録してみて
休みの日に10時間以上眠ってしまう人は、睡眠時間を無理に短くしようとするよりも、平日の睡眠環境と習慣を整えてみよう。下浦先生は、1週間分の就寝時刻・起床時刻・実際に眠れた時間の記録をすすめる。「どの日にどれくらい眠れているかを見えるようにすれば、生活のリズムや睡眠の偏りに気づけます」

スマホは寝室に置かない
スマートフォンの使い方も見直してみよう。画面の光は眠気を誘うホルモンの分泌を妨げるため、「寝室にスマホを置かない」「一定時刻で操作をやめる」といった工夫が効果的だ。
「眠っている時間の長さだけでなく、眠りやすい状態を整えているかどうかが重要です。毎晩決まった時間に布団へ入り、部屋の照明を落として静かに過ごす習慣を意識してください」
生活に支障をきたしたら病院へ
十分な睡眠時間を確保していても、日中に強い眠気が続いたり、授業中に何度も眠ってしまったりする場合、睡眠障害が疑われる。
「過眠症など昼間の眠気が中心となる疾患も存在します。夜に長時間眠っていても、質が低ければ休息としては不十分。生活に支障をきたしているなら、睡眠外来に相談してください」
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下浦雄大
RESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長。専門は循環器内科。日本睡眠学会総合専門医・産業医。山梨大学医学部卒業。