試験前はついつい睡眠時間を削って勉強しているという高校生も多いだろう。「短時間でも睡眠の質を上げる」ことはできるのだろうか。睡眠の専門医・下浦雄大先生に聞いた。(文・黒澤真紀、監修・白濱龍太郎先生)

短時間でも睡眠の質を上げたい
高校生新聞の高校生読者に睡眠に関する悩みを聞いたところ、「試験前や課題の締め切り前など、しかたなく睡眠時間をどうしても削ってしまいます。短時間でも質の良い睡眠をとる方法はありますか?」(高3)と声が寄せられた。削りがちな睡眠時間。短くても質の良い睡眠はできるものなのか?

短時間睡眠で「質」は担保できない
下浦先生は、「短くて質の良い睡眠……僕も逆に聞きたいくらい(笑)。気持ちは本当によくわかりますが、睡眠の“質”だけで短時間睡眠を補うには限界があります」と話す。体や脳がしっかり働くためには、やはりある程度の睡眠時間が必要だ。
試験直前でも「最低4時間」は寝たい
睡眠中には、浅いノンレム睡眠、深いノンレム睡眠(深睡眠)、レム睡眠と、異なる段階があり、それぞれ役割が異なる。中でも深睡眠は、成長ホルモンの分泌を促し、代謝を高める重要な時間。若年層ほど多く現れる。睡眠後半にはレム睡眠が増え、記憶の整理や感情の調整が行われる。
「どちらの時間帯も大切なので、短時間で効率的に寝るかではなく、できるだけ睡眠時間を確保するのが基本です。眠ってから4時間以内に深睡眠がしっかりとれたかが質を左右するので、最低でも4時間は休んでほしいですね」
30分以内の仮眠で眠気を軽減
どうしても時間が取れないときは、昼間の仮眠をうまく取り入れるのも一案だ。「15〜30分の昼寝は眠気を軽減する手段として有効です。ただし、長く眠りすぎると深い睡眠に入ってしまい、寝起きに強いだるさ(睡眠慣性)が出たり、体内時計がずれたりする可能性があります」

カフェインで眠気を飛ばす
昼寝をする前にコーヒーやお茶でカフェインを取る「カフェインナップ」も有効だ。カフェインの覚醒作用は摂取してから30分ほどで現れるため、ちょうど目覚めるころに効果が出てスッキリ起きられる場合がある。反対に、夜寝る前のカフェイン摂取は、眠る1時間半、できれば4時間前から控えたい。
だが、一番は睡眠時間を削らないことだ。そのまま机に向かってもウトウトしてしまい、無理に起きようとあらがっても集中できる可能性は低い。万全のコンディションで試験に臨むためにも、睡眠時間の確保を優先する意識を学習計画に組み込んでいきたい。
「極端に短い睡眠や徹夜が続くと、試験当日にうっかりミスをするなど、実力が出しきれません。今後何十年も使っていく脳なので、休ませるのは大事だと考えるようにしましょう」
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下浦雄大
RESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長。専門は循環器内科。日本睡眠学会総合専門医・産業医。山梨大学医学部卒業。