「難しい問題を見ると眠くなる…」授業中や勉強中の眠気に悩まされる高校生へ。眠くなるのは、「隠れた睡眠不足」のサインかも。睡眠の専門医・下浦雄大先生に聞いた。(文・黒澤真紀、監修・白濱龍太郎先生)

 

眠気に勝って勉強したい…

高校生新聞の高校生読者に睡眠に関する悩みを聞いたところ、「家に帰るとすぐに寝てしまいます。勉強しなければと思うのに睡魔に勝てず怠けてしまいます」(高2)、「勉強中に眠くなるのをどうにかしたい。特に英語や国語を読んでいて、難しい問題で手が止まった瞬間に寝落ちしてしまうんです」(高3)と悩む声が寄せられた。眠気に勝つにはどうすればよいのだろうか。

勉強中の眠気をどうにかしたい(写真はイメージ)

睡眠不足状態なのかも

下浦先生は、就寝時間前の眠気が起きるのは、「睡眠不足になっている」可能性を指摘する。「慢性的な睡眠不足は、眠気を感じる前に集中力の低下を招きます。眠くないと思っていても、何度も同じ文章を読み返してしまったり、頭がボーッとしたりします」

まずは30分早く寝てみる

厚生労働省の「睡眠ガイドライン」(2023)によれば、高校生の理想的な睡眠時間は1日8〜10時間。アメリカ国立睡眠財団の提言でも同じ基準が示されているが、しっかり確保できている高校生は多くない。

「2〜8時間の異なる睡眠時間で2週間生活してもらい、眠気と集中力を測った研究では、4時間と6時間睡眠では自覚する眠気に差が見られませんでしたが、集中力を測定する作業ではミスの数に明確な差が出ました(出典:Van Dongen HP, et al. Sleep. 2003 :117-26.。本人が『眠くない』と感じていても、実際には脳の働きに影響が出ているのです」

睡魔に勝つには、「1日30分でもいいので早く寝ようと意識する」とよいという。「翌日の過ごし方が変わりますよ!」

短時間の昼寝でスッキリ

特に午後の授業で眠気と戦う高校生も多い。「午後1時〜4時の時間帯は、体内時計の影響で誰でも眠くなりやすい時間。むしろ体内リズムが整っている人ほど、眠気を感じる傾向があります」

午後の眠気がつらいと感じる場合は、13時から16時に短時間の昼寝を取り入れるのも効果的だ。授業の合間の10分休みに目を閉じて静かに過ごすだけでも脳はリフレッシュする。一方で、夕方以降の居眠りには注意が必要だ。

「18時以降からは一般的に“睡眠禁止帯”と呼ばれています。体の仕組みとして眠気が起こりにくくなっている時間帯であり、うたた寝をしてしまうと夜の睡眠に悪影響を及ぼします」

短時間の昼寝でリフレッシュ(写真はイメージ)

数日にわたる眠気が改善しないなら病院へ

「もし、数日間にわたって強い眠気が続いていて、授業中に起きていられない、集中できないといった生活に支障が出ているなら、何かしらの睡眠障害が背景にあるかもしれません。一度睡眠外来に相談してもらいたいです」

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下浦雄大

RESM新東京スリープメディカルケアクリニック副院長。専門は循環器内科。日本睡眠学会総合専門医・産業医。山梨大学医学部卒業。