魚介類に寄生し、生食で食中毒を引き起こす寄生虫「アニサキス」。深井なつこさん(茨城・茗溪学園高校3年)は、アニサキスを死滅させるハーブを探し、1年かけて実験を続けている。

「アニサキス症の治療薬開発」を目指す

―研究を始めた理由を教えてください。

日本では毎年「アニサキス症」の症例数が数百件報告されています。しかし、内視鏡でのアニサキスの摘出以外に治療法はなく、アニサキスに効く薬も存在しません。

私はタイでの中期留学の経験から、タイでよく使われるハーブに注目。アニサキスを死滅させる成分を含むハーブがないか、研究しました。

「SSH生徒研究発表会」でポスター発表をした深井さん(写真・椎木里咲)

パンダンリーフの抽出液で死滅

―どう実験を行いましたか?

まず、パクチーやレモングラスなど、日本でも入手可能なハーブを10種類選びました。そして、カツオを中心とした生魚の内臓からアニサキスを採取。それぞれのハーブの抽出エキスにアニサキスを投入し、死滅するかを確認しました。

結果、9種類のハーブでは1匹も死滅が確認されなかったのに対し、パンダンリーフの抽出液に投入したアニサキスは全てが死滅しました。現在は、成分の構造特定を行うための実験を継続しています。

10種類のタイハーブ抽出液にアニサキスを投入し、死滅するか確かめた(写真・本人提供)

500匹以上のアニサキスを採取

―研究を進める上で大変だったことは?

これまで生魚の内臓から500匹以上のアニサキスを採取しましたが、魚の生臭さがつらかったです……。ですが、実験で成果が得られてからは、モチベーションを上げて採取できました。

研究発表ポスターより。カツオからアニサキスを採取する様子

成果が出なくても根気よく続けられた

―どんな力が身に付いたと感じますか?

実験では、手順を間違えて作業が全て振り出しに戻ったり、望んだ結果が得られなかったりすることも多かったです。しかし、新たな発見をした時のワクワク感は忘れられませんでした。すぐに成果が出なくても、根気強く続ける力を身に付けられました。

アニサキス症の治療薬開発につなげたい

―今後の展望を教えてください。

今後は環境温度を変えた実験や、人間の胃酸レベルの酸性下での実験を行いたいと考えています。将来的には、いまだ実現されていないアニサキス症の治療薬の開発につなげるのが目標です。