中高生の自転車事故が毎年多く発生している。「自転車運転をより安全に」という思いから、佐藤夢駿(ゆうま)さん、猪野迫天翔(いのさこ・そら)さん(ともに大分・日本文理大学附属高校3年)は、頭の動きだけで方向指示ができる自転車運転用ヘルメットを開発した。

頭を傾けるだけで方向を示せるヘルメット

2人が開発したのは、自転車のハンドルから手を離さずに、頭の動きだけで進みたい方向を示せるヘルメットだ。名前は「方向メットくん」。ヘルメットの後頭部に取り付けた小型コンピューター「マイクロビット」が、使用者の首の動きに応じて光る仕組みになっている。

開発した「方向メットくん」。首を傾けた方向に矢印が表示される(写真・学校提供)

右に傾けると右向きの矢印、左に傾けると左向きの矢印が点灯し、前に傾けると点滅してブレーキの合図になる。「進行方向を示すときに、ハンドルから手を放さずにすめば事故が減らせるかもしれない、という考えから生まれた発明です」(佐藤さん)。

2年生の7月から、平日放課後の2時間、さまざまな開発を行っている。

危険運転の現状に課題を感じて

「発明クラブ」という部活で、「発明や工夫で課題を解決したい」と日頃からアイデア出しに取り組んできた。目を向けたのは自転車通学だった。「学校で行われた交通安全教室で『手放し運転をする高校生が多い』『友達としゃべりながら運転して注意散漫になっている』という話を聞いたんです」(佐藤さん)。

さらに、ニュースで自転車にも違反に対し罰金が科される「青切符」が導入されたと知り、より安全に運転できる方法を模索した。「僕たちの高校も、周囲の中高も自転車通学の生徒が多い。僕たちも自転車通学だし、自転車の安全を手助けできる発明をしようと思いました」(猪野迫さん)

開発した佐藤さん(左)と猪野迫さん(写真・学校提供)

センサーの調整に試行錯誤

まずは、必要な部品を集め、デザインを決め、プログラムも一から試作した。完成に向けての最大の課題は、動作精度だった。頭の傾きに反応するセンサーの調整が難しく、「首をかなり曲げないと反応しない」「少し動いただけで誤作動する」などの問題が何度も発生した。

テストを繰り返しながら、正面から少しずつ傾けて最適な角度を測定。最終的に、30〜40度程度の傾きで反応するよう設定した。「まっすぐ進みたいのに曲がる合図を出してしまうような誤作動を防ぐ工夫をしています」(猪野迫さん)

ヘルメットを手で持って傾け、センサーの反応する角度を調整した(写真・学校提供)

小・中・高校生など創意工夫して作った作品を表彰する「第83回大分県発明くふう展(大分県発明協会主催)」で県教育庁賞を、「第83回全日本学生自動発明くふう展(発明協会主催)」で奨励賞を受賞した。「開発を通じて『便利なものを考える力』『発明のおもしろさ』に出会えました」(佐藤さん)