真夏の部活で、熱中症になった経験のある人はいないだろうか。「自分は鍛えてるから平気」なんて油断が命取りにつながる。救命救急医の清水敬樹先生(多摩総合医療センター)に、部活中の熱中症対策を聞いた。(木和田志乃)

夏の部活動は熱中症リスクが高い

夏の運動部の活動では、熱中症のリスクがぐんと高まる。過去には、野球部のランニング中に倒れた高校生が亡くなった例もあった。

清水先生は「特に熱中症の搬送例が多いのはサッカー、野球、バスケットボールなどの部活動だ」と話す。炎天下で長時間の練習が行われる部活動はリスクが高い。

炎天下の部活は熱中症リスクが高い(写真はイメージ)

安全に見える競技にも落とし穴

一方で、屋内の競技でも油断はできない。例えば、バドミントンは競技の性質上、扉を閉め切って風のない環境でプレーするため高温多湿になりやすい。剣道は防具や剣道着、はかまを身に付けるため体温が上がりやすい。

安全そうに見える水泳部も例外ではない。夏場はプールの水温が体温に近づくこともあり、体から熱が逃げにくくなる。また、泳いでいない時間に直射日光を浴びることも多く、これが熱中症の原因になることもある。

合宿は熱中症に要注意

発生時期で特に多いのは7月下旬から8月の「合宿シーズン」だ。練習時間が長くなり、疲労もたまりやすいためだ。ただし熱中症は真夏だけの問題ではない。

「5月や6月の比較的涼しい時期でも、まだ体が暑さに慣れていない中で長時間の運動を行うと、熱中症になる可能性があります」

こまめな休憩と「声かけ」が命を守る

熱中症を防ぐためには、こまめな休憩が欠かせない。「30分に1回、あるいは1時間に1回など、定期的に休憩するのが大切です。チームの中で最も体力のない人に合わせて休憩を取るという考え方も必要です」とアドバイスする。

特に、体が暑さに慣れていない新入生は、熱中症のリスクが高い。また、先輩に遠慮して無理をしがちだ。こうした部員にこそ周囲の気配りが求められる。

こまめに休憩を取ることが大切

倒れるのは「体力のない人」だけではない

以前は体力のない人が倒れるケースが多かったが、近年では責任感の強い主将やエースが無理をして倒れる例も目立つという。「頑張りすぎる子ほど、倒れるまで休まないことがあります。だからこそ、指導者やチーム全体で『30分に一度は休憩する』といったルールを作り、皆が堂々と休める空気をつくってください」と呼びかける。

部活中の熱中症を防ぐポイント

体力がある高校生でも、風邪気味や寝不足であれば熱中症にかかりやすくなる。どんなに鍛えていても「今日はちょっと変だな」と思ったら、ためらわずに休む勇気を持とう。

清水敬樹先生(多摩総合医療センター)

しみず・けいき 東京都立多摩総合医療センター・救命救急センター部長。熱中症や救急救命治療などに専門的に携わる。