「なんとなく体がだるい」「頭が重い」……それは熱中症のサインかも。放っておくと、高校生であっても命を落とす危険がある。救命救急医の清水敬樹先生(多摩総合医療センター)に知っておくべき熱中症の症状と正しい対処法を聞いた。(木和田志乃)
【死亡例は?】高校生でも死亡したケースあり
2005年から23年の間に高校の活動中に熱中症で命を落とした生徒は少なくとも19人にのぼる(日本スポーツ振興センター)。
気温や湿度が高くなる季節、熱中症は誰にでも起こりうる。運動中や登下校時にも注意が必要だ。
【どんな症状が出るの?】立ちくらみや頭痛、吐き気に注意
熱中症になると、体内の水分と塩分が失われる「脱水症状」と、体温の上昇が起こる。特に初期には脱水により脳への血流が減少し、立ちくらみやめまい、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)といった症状が現れる。
これらの症状は他の体調不良と区別がつきにくいこともあるが、清水先生は「暑い環境下でこのような症状が出た場合は、熱中症を疑うべきだ」と警鐘を鳴らす。

【異変を感じたら?】「大量の汗」は熱中症の一歩手前
症状を感じる前から、体が危険な状態に陥っていることも少なくない。例えば、大量の汗をかいている場合は熱中症の一歩手前と考えられている。「大量に汗をかいたときは、それに見合った水分を取ることが重要です」
少しでも異変を感じたら、冷房の効いた室内や日陰へ移動して休むのが大切だ。

【対処しないと?】脳へ後遺症の危険
適切な処置をしなければ、熱中症は急速に悪化し、命に関わる事態にもつながりかねない。意識障害やけいれんが起こったり、脳や心臓、腎臓など、体のさまざまな臓器に悪影響を与えたりする場合もある。
特に脳への血流が長時間低下すると、脳に重大なダメージを与え、その結果、意識が戻らなくなったり、後遺症をもたらしたりするケースもある。脳は高体温に弱い臓器のため、体温が高い状態に置かれ続けるのはとてもにダメージが大きいのだ。早め早めの対応がとても大切」だと強調する。
【救急車を呼ぶ基準は?】水を飲めなくなったら呼んで
「『大げさだと思われたくない』『救急車を呼ぶのは恥ずかしい』という思いから、我慢してしまう高校生や指導者が多いのですが、危険です。治療は医療の専門家に任せてほしい」

周囲に熱中症の疑いがある人がいた場合は、すぐに日陰や冷房のある場所に移動させ、水分を補給させよう。このときに最も重要なのは、「自分で水分補給ができるかどうか」だ。
「自ら水分補給ができないのは、重症であるサイン。迷わず救急車を呼んでください」。自分で水を飲める場合は救急車を呼ばず、涼しいところで休ませるのが原則だ。

暑さ避けられる場所を調べておこう
とはいえ、高校生活では、暑さの中で活動せざるをえない場面も多くある。熱中症を防ぐには、出掛ける前の準備も大切だ。例えば、避暑シェルター(クーリングシェルター)として解放されているコンビニや公共施設など、冷房が効いている場所や日陰を事前に把握しておけば、万が一、体調が悪くなった時に避難できる。
「今はテレビの気象情報や、スマホアプリなどでWBGT(暑さ指数)や警戒情報がすぐに確認できます。水分を持ち歩くことと合わせて、情報をうまく活用して、自分の身を守ってください」
清水敬樹先生(多摩総合医療センター)
しみず・けいき 東京都立多摩総合医療センター・救命救急センター部長。熱中症や救急救命治療などに専門的に携わる。