高校生シンガーソングライターの栩本青空君(徳島・池田高校辻校3年)は、自らの音楽活動だけでなく、依頼者への作詞・楽曲提供も行う音楽クリエイターだ。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第24回「高校生新聞社賞」にも選ばれた栩本君が、高校時代の音楽活動や作詞・作曲法などを語ってくれた。(文・中田宗孝 写真・学校提供)

高校生で「個人事業主」、オリジナル楽曲を販売

―高校ではどんな音楽活動をしましたか?

中学卒業と同時に「個人事業主」なりました。必要な資料を集めて開業届けを提出。中学のときからビジネス書を読み、音楽の仕事について調べていたんです。

昨年11月23日に開催された「四国まんなかコンサート」にて

作詞・作曲・編曲したオリジナル楽曲を自宅でレコーディング。デジタルアルバム、シングルとしてネット販売、商業イベントなどでライブ出演した会場で自主制作のCDを手売りしました。

地元のラジオ局に「僕の曲をラジオで流してください」とメールして、実際にオンエアされたこともあります。

クラウドソーシングでVTuberに楽曲提供

―個人の音楽活動と並行して、企業や個人に向けての作詞・楽曲提供もしていますね。

コロナ禍でライブ活動ができず、曲作りを精力的に行っていました。曲を作るのは結構早くできると感じていたし、自分の活動の幅を広げていこうと考え、音楽制作の仕事を募ってみようと思いました。

楽曲提供に限らず、自分の特技や技術をネット上で販売できる「クラウドソーシングサービス」を活用して、クライアントからの依頼を受けています。

地元の音楽フェスティバルなどにも積極的に出演している

それまで自分の思いだけで音楽制作を行ってきましたが、依頼主の要望を汲み取りながら自分らしい歌詞や楽曲に仕上げるにはどうすればいいか考えるようになりました。納期に間に合わせつつ、依頼主に満足していただけるクオリティの音楽を作るのは、緊張感もありありますが、やりがいを感じています。

これまでに、依頼者から渡された既にある曲に歌詞を付ける、「VTuber(バーチャルYouTuber)」への楽曲提供などの仕事を受けました。

「1曲30分」で曲ができます

―どうやって作詞・作曲しているんですか?

ギターを弾きながら鼻歌を歌いメロディを探す、音楽制作ソフトでピアノ音などを鳴らしながら曲を考えていく2パターン。早いと1曲30分で曲が完成します。既存の楽曲を歌いながら、聴きながら「こんな感じの曲を作りたいな」と頭に浮かべていると、“メロディが降りてくる”こともあります。

作詞は、1曲を“一つの物語”として考えて書いてます。例えば、主人公の男の子と、彼が好きな女の子を想像して、2人の恋愛模様を1曲の中で物語のように語っていく。このような作詞スタイルです。

歌声に納得いかないスランプ乗り越え

―スランプに陥った経験はありますか?

高2のとき、録音した自分の歌声が、自分の耳で聞き取っている歌声と大きくイメージが違っていたんです。納得がいかず、何度歌い直しても声の感じは変わりません。それと、僕の楽曲を聞いた人がネット上に「歌が下手」と投稿したのを見つけてしまって……。

―歌唱のスランプをどう乗り越えましたか。

ボイストレーナーの先生から助言をもらいました。それまで僕は、ボーカルやコーラスのレコーディングのときはヘッドホンをしながら歌っていたんですが、片耳だけヘッドホンを外して、片耳は自分の声を聞ける状態に変えたんです。すると、自分の耳で聞いている歌声に近づけるようになりましたね。

シンガーソングライターとして活躍したい

―高校卒業後の音楽活動は?

地元を離れ、関西の音楽系の専門学校に通いながら、シンガーソングライターの活動や音楽提供を続けていきます。やっぱり僕は、お客さんの反応がダイレクトに伝わってくるライブが一番好きなので、新たな場所でもライブ演奏の機会をたくさん作っていきたいです。自分の歌や楽曲が日常生活のあちこちにあふれている。そんな目標を持ちながら、音楽と向き合っていきます。

【ミニQ&A】初ステージは5歳、北島三郎を熱唱

―どんな家庭で育ったの?

幼いころから洋・邦楽が家でいつも流れていて、祖父が好きな演歌や民謡も身近な音楽でした。

―音楽を始めたきっかけは?

小学生のときに「GREEN DAY」(米国出身の3人組パンクバンド)のライブ映像を見て「ギターを弾きたい!」と強く思うように。小5のクリスマスにアコースティックギターを買ってもらい、手に“ギターだこ”ができるほど夢中になって四六時中弾いていましたね。

―初めてステージに立ったのは?

5歳のころ、地元のイベントで北島三郎さんの曲を歌いました。

―子供の頃のライブの思い出は?

小6のときには、長渕剛さんの「とんぼ」ギターの弾き語りのスタイルで初めて演奏。ライブ後、興奮状態がずっと続いて一週間くらい熱を出してしまったんです(苦笑)