久保田将宗さん(山梨・韮崎工業高校=3月卒業)は、昨夏、道端で倒れている高校生を発見して救助活動に奔走した。急を要する不測の事態に遭遇したにもかかわらず、なぜ冷静さを保ちながら適切な対処ができたのか。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第25回「高校生新聞社賞」に選ばれた久保田さんに、当日の行動を振り返りながら語ってもらった。(文・中田宗孝、写真・学校提供)

倒れている生徒を発見し救助

昨年7月、久保田さんが部活で校外をランニングしていたところ、学校近くの路上で倒れていた男子高校生に遭遇した。「まず肩をたたいて声掛けして、応答がなかったので呼吸や脈拍を確認しました」

熱中症で意識を失っていた男子生徒の救助活動にあたった久保田将宗さん

容体をひと通り確認すると同時に、大きく深呼吸して自身も平静を保った。「自分が焦ってしまうと、救助を必要とする人がより危険な状態になってしまう可能性も。決して慌てず、目の前の状況を整理しようと心掛けていました」

先生を呼び、氷水入りの袋で男子生徒の体の熱を冷ましたり、自動体外式除細動器(AED)を装着するなど一緒に介抱した。それから数分後、救急車が到着。病院へ搬送され熱中症と診断された男子生徒は、無事回復し、現在は普段どおりの学校生活を送っているという。

山岳部で学んだ知識が生きた

思いもよらぬ緊急事態に直面したにもかかわらず、短時間で的確な判断や行動がどうしてできたのか。その理由の一つは、久保田さんが山岳部員だったことにある。山岳部では、突然の体調不良やけがをした際の応急処置、対処法を学んでいた。「普段の部活での取り組みの成果を発揮できました」と振り返る。

「山梨県高校総合体育大会」登山競技に出場した久保田さん(右)。山岳部では部長を務めた

訪れた施設のAEDの場所をチェック

高校卒業後、久保田さんは海上自衛隊に入る。心身の鍛錬だけでなく、日頃の危機管理への意識も人一倍高い。「訪れた施設内では消火器やAEDの位置を覚えるようにしています」

山岳部員らとの登山。久保田さん(左から2人目)は、「四季折々の景色を感じながらの山を歩くのが楽しい。山頂に到着したときの達成感は格別」と思い出を語る

春からはハードな訓練の日々が続くが、「今、世界情勢が緊張状態にあると感じています。いつ有事の状況が起きるかわかるか分かりません。その時には、自分が主体となり最前線で日本を守りたい」と、強い決意を言葉にした。

2023.05.12 15:50 自動体外式除細動器(AED)使用方法にあたり誤解を招く表現がありましたので、訂正しました。