車いすテニス選手の川合雄大さん(群馬・前橋商業高校3年)は、日本代表選手として国内トップクラスの実力を持つ。持ち味のパワフルなプレースタイルを築きあげたのは、地道に続けた日々の基礎練習のおかげだという。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第25回「高校生新聞社賞」に選ばれた川合さんが、努力の日々を語ってくれた。(文・中田宗孝、写真・学校提供)
強烈なパワーストロークが武器
川合さんは高校生にして、日本車いすテニス協会(JWTA)による国内ランキングで男子シングルス4位、男子ダブルス1位(1月11日時点)に位置する車いすテニスの選手だ。大人の選手も出場する昨年4月の国内ダブルスの大会では優勝を飾った。
武器は、右腕一閃(いっせん)で強烈なボールを放つパワーストローク。「ボールにむちゃくちゃ回転をかけて相手選手の目の前で落ちるので、相手のプレーも崩せるショット。中学のころに自分の武器だと気がつきました」
地道に球の打ち合い繰り返し
テニス界では、1つの技の習得にはおよそ10万球打つと言われているという。川合さんも地元のテニスクラブで週5~6日、球出し(相手と打ち合う練習)を繰り返し、得意ショットを磨きあげる。
「自分よりも球のスピードが早い健常者のコーチの球をひたすら受けて“自分のショット”で打ち返す。威力ある球は打てていると思うのですが、連続して打つ安定感や精度の面ではまだまだと感じています」
スピード面は、チェアワーク(車いす操作の技術)などで強化。選手たちはおのおの、特注の車いすを使用しており、川合さんはチェア部分を大きくカスタマイズ。「今よりも筋力がないとうまく扱えない車いすなのですが、自分自身を高めるため、あえてそれでプレーしているんです」
「攻め」のメンタルが持ち味
二分脊椎(にぶんせきつい)という先天性の障害を持つ。6歳のころ、テニス経験者の母親に誘われて車いすテニスの体験会に参加し、「ラケットでボールを打ってみると『あぁ、これだな』って」
小2で初出場した試合では、年上の選手と対戦して1回戦敗退。「地元のクラブでは俺が一番強かったのに……逆に燃えました(笑)」。攻め姿勢を崩さないメンタルを当時から備え、それも彼の強みだ。川合さんが0ポイント、対戦相手は勝利目前のマッチポイントを迎えた状況から心を奮い立たせ、逆転勝ちを収めた試合もある。
「誰にも負けたくない強い気持ちで試合に臨みますが、勝ちを意識しすぎるのも慢心につながるので良くない。プレー中は無心を心がけるようにしています」
日本代表として世界を相手に
大学進学後はひとり暮らしを始め、新たな環境での挑戦が始まる。とはいえ「基礎をコツコツと」と話す練習姿勢はこれまでと変わりない。
座右の銘は「雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)」。「努力を続けていれば、いずれ大きなことを成せる。小学生のころから大切にしている言葉です。新たな練習環境でも、緊張感をもって取り組んでいきたい」
2028年のロサンゼルスパラリンピック出場を目標に掲げ、前を見すえている。