コロナ対策のための健康観察シートの提出率が低い。「どうにかしたい」と思い立った松井ももさん(埼玉・松山女子高校=3月卒業)は、プログラミングの知識を生かし、楽に入力するシステムを構築。その結果、クラス全員が提出するようになった。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第25回「高校生新聞社賞」に選ばれた松井さんに、活動への思いを聞いた。(文・中田宗孝、写真・学校提供)

健康観察シートの提出率が低下

同校の生徒たちは、コロナ禍の体調管理のため健康観察シートを毎日提出。登校すると各自のスマホで、教室に掲示されるQRコードを読み取り、その日の体温などを「Googleフォーム」に入力して送信する流れだ。だが、月日がたつにつれ、健康観察シートの送信を忘れる生徒が徐々に増え、提出率は全学年で低下してしまった。

プログラミング知識を駆使し、各生徒のスマホに健康観察シートが直接届くようにシステムを作り直した

パソコンやプログラミングに詳しい松井さん(当時2年生)は、クラスメートに連日メールで提出を促していた友人の大変そうな様子を見て、楽に入力ができる新たなシステムを考えた。

パソコンの知識生かしシステムを改善

松井さんは、健康観察シートをクラス全員が参加する「グループLINE」で送るシステムに変更した。送信時間をあらかじめ設定すると、各自のLINEに提出の案内メッセージとともに「Googleフォーム」のリンク先が自動で一斉に届く。そこにアクセスして体温などを入力する仕組みだ。

「健康観察シートを自動化できれば楽なんじゃないか。そう思い立ったその日のうちに元々活用していたシステムの仕様をプログラミングし直し、2時間程度の作業で新システムをほぼ完成させました」

松井さんのアイデアと行動力で生徒たちの学校生活を豊かにした

教職員にプレゼンし採用

QRコードを読み取る手間を省いた結果、当時のクラスメート40人全員が健康観察シートを提出するように改善されたという。保健の先生や校長先生、そして職員会議の場でプレゼンし、昨年1月からは全学年で導入された。

学校側への提案は、彼女と仲の良い友人で生徒会長を務めた滝田和永さん(3年)の強いあと押しもあったという。「私は当初、クラス内で使えればいいかなと思っていたんです。生徒会長の滝田さんの『学校全体を良くしたい』という思いと重なり、全校生徒が利用することになりました!」

自らの知識や気づき、行動力で高校生活の仕組みを便利に変えた松井さん。高校卒業後は情報系の大学に進学する。「PC環境がより充実する大学では『3DCG』の技術を磨いていきたい」と意気込んでいる。