軍艦のプラモデル集めが趣味だという小口心也さん(東京・新渡戸文化高校3年)。その胸にある「戦争の悲惨な体験を受け継ぎ、同世代に平和の尊さを広めたい」という強い使命感のもと、戦争体験者を招いた講演会主催など積極的に活動してきた。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第25回「高校生新聞社賞」に選ばれた小口さんに、活動への思いを聞いた。(文・黒澤真紀、写真・学校提供)

祖母の戦争経験聞き興味、軍艦プラモデルを収集

「こわい。戦争ってなに?」

小口さんが「戦争」を知ったのは小学4年の時。祖母から、東京大空襲での恐怖や、出征先で出撃を待ちながら終戦を迎えた祖父の話を聞かされた。初めて聞く「想像もつかないような恐ろしい体験」に衝撃を受け、興味を抱くようになった。

小口さんはこれまでに約60個の軍艦プラモデルを制作。写真は、文化祭に出展した作品

中学生になり、インターネットで戦争について調べ、軍艦に関心を持ちプラモデルを集めはじめた。その数、今や60体。「戦争を二度と起こさないために、若い世代の自分たちに何ができるのか」を考えはじめ、「教科書には載っていない体験を知りたい」と思うようになった。

戦争体験を伝えるオンライン授業を企画

高校生になった小口さんは、15歳で海兵団に入団し戦艦の乗組員としてマリアナ沖海戦などに参加した西崎信夫さんの著書『「雪風」に乗った少年』を読み、深く感銘を受けた。インタビューを申し込み、その模様を動画にまとめ、文化祭や学習発表会で発表した。

「西崎さんの言葉や思いを学校のみんなにも届けたい」と願い、全校生徒向けのオンライン授業を企画。2021年6月、西崎さんの自宅とオンラインで同校をつなぎ講演会という形で実現した。

西崎信夫さんの著書を手にする小口さん。憧れの西崎さんとの交流は小口さんに大きな影響を与えた

生々しい西崎さんの戦争体験に、多くの生徒が心を揺さぶられ、アンケートには「自分だったら耐えられない」、「戦争は絶対に起こしてはならない」との回答がならんだ。

同年秋、西崎さんの訃報が届いた。家族葬に招かれた小口さんは、遺族から「最期まで講演会の話をしていました」と聞き、改めて「西崎さんの遺志を受け継ごう」と思いを新たにした。

戦争体験者の思いを受け継いでいきたい

22年には、ウクライナからの避難者や関係者、第二次世界大戦後のシベリア抑留経験を持つ西倉勝さんを校内に招き、対話式の講演会を主催した。「戦争はニュースでは報じきれない苦しみがあると思う。その痛みを共有することが、戦争について考えるきっかけになるのでは」

ウクライナからの避難者とシベリア抑留の経験を持つ西倉勝さんを学校に招いた対話式の講演会。小口さんは企画から携わる

大学では歴史学科を専攻し、「歴史について幅広い知識と深い考察力を身につけたい」という。「歴史への興味を掘り下げながら、西崎さん、西倉さんら、戦争体験者の思いをこれからも受け継いでいきたい」