石井康太さん(千葉・一宮商業高校3月卒業)は、小学3年生から高校3年まで、毎朝6時半に近くのお寺にある釣り鐘を鳴らしている。高校3年間ひときわ努力を重ねた生徒をたたえる第25回「高校生新聞社賞」に選ばれた石井さんに、9年間、決めたことを継続できた理由を聞いた。(文・黒澤真紀、写真・学校提供)

9年間毎朝寺の鐘鳴らす

「ゴーン、ゴーン、ゴーン」。毎朝6時半になると、本善寺(千葉県いすみ市)の優しい鐘の音が街に鳴り響く。石井さんは、小学校3年から高校3年までの9年間、毎朝釣り鐘を鳴らし続けている。

本善寺の釣り鐘を鳴らす石井康太さん

きっかけは、小学3年生のころ、それまで鐘を鳴らしていた近所の人が入院してしまったこと。本善寺から自転車で3分ほどのところに住んでいる石井さんが、「それなら僕がやる」と、その役を引き継ぐことになった。本善寺は、お盆や年末の墓参り、初詣などに家族で参拝しているお寺で「大切にしたいと思った」という。

「行かないほうが気持ち悪い」

最初は家族に起こしてもらっていたが、今は6時過ぎにアラームをセット。自転車で本善寺にむかうと、いつものように3回鐘を鳴らし、手を合わせて深呼吸する。帰宅後、着替えて朝食をとり、電車で登校するのが日課だ。

9年もの間、一つのことを継続するのは並大抵のことではない。「楽しい習慣になっていたこと」が継続できた理由の一つだという。冬の寒い朝は「もう少し布団で寝ていたい」と思うこともあるが、「鐘をつくのが習慣になっているので、行かないほうが気持ち悪いんです。今では行くのが楽しくなっています」と笑う。

鐘を鳴らし手を合わせ深呼吸。楽しい日課になった

「ご苦労さん」「いつもありがとうね」。近所の方からかけられるねぎらいの言葉も、原動力になっている。地域の人とは顔なじみで、だれもが石井さんを小さいころからよく知っている。「みんな声をかけてくれ、あいさつを返してくれる。あたたかい人たちばかりです」

鐘の音で心が落ち着く

6時半はまだ街が眠っている時間。「そこに響き渡る鐘の音を聞いていると、心が落ち着くので、この時間が好きなんです」。サッカー部の試合前や、公務員試験の日もここで心を落ち着けてから本番に臨んだ。

地元の友達も鐘をついていることを知っており、時折声をかけてくれる。「卒業後、会う機会が少なくなった友達もどこかで聞いてくれているかも知れません」

「街や人を守りたい」消防士目指す

4月から地元を離れ東京消防庁に就職し、消防学校での寮生活が始まる。面接試験では、釣り鐘を鳴らし続けたことを堂々と発表する石井さんに、面接官たちは多いに興味をもったそうだ。

消防士を目指したのは、東日本大震災の救助活動をテレビでみたことがきっかけだ。「地元の消防団で働く父からも影響を受けました。街や人を守りたい」。今後は、家族が交代で鐘を鳴らそうと話している。