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加藤ひかる(三重・神戸高校3年)

皆さんは人生の中で大きな決断をしたことがありますか?私は高校二年生の九月、大きな決断をしました。

高校一年生の春、放送部に入部した私は、同級生が九人いる中、活躍をして、初の大会では一年生で唯一、奨励賞を取ることができました。放送部と聞くと、何をやっているのかあまり想像ができないと思います。でも、放送部って私が想像していたよりも忙しくて、地域のイベントに参加したり、学校の行事で司会をしたり、校内でお昼の放送をしたり、週に一度、地元のFMで放送するラジオを制作したり、多様な活動をしています。なので、常にバタバタしていました。

二年生になってからは、部長に選んでいただいて、放送部を引っ張っていく形になりました。しかし、それまでに薄々気がついていたのかもしれないけど、突然その時がやってきました。

夏休みが明けてから、何もかも嫌になったんです。部活のことも勉強のことも全部投げ出したくなりました。辛いな、なんで今こんなにも苦しいのかな。しんどい。なんにもやりたくない。最初は、楽しい!自分にピッタリ!と思って続けていた部活がいつの間にか重たい荷物になっていました。

勉強面でも、神戸高校の理数科に入ることはできたけど、周りのみんながどんどん順位や点数を上げて、学力を伸ばしているのに、私はなにも変わらない。理数科と言えるような位置にもいない。授業にもついていけない。なんでみんなは分かっているのに私だけが分からないのかな。自分の努力が足りないって分かっていても、そんな自分が大嫌いで、許せなかった。なんで理数科に入ったんだ。なんでこんな私が理数科に入れたんだ。自分を責め続けました。わけもなく泣きたくなって、一人でいると自然と涙があふれてきました。 

そんな時に、私が相談できた相手は高校入学当初から担任をしてくれている先生でした。担任の先生には思っていることを全部吐き出しました。すごく尊敬している先生だったからか親にも言えないのに、なぜか先生には言えて、たくさん相談に乗ってもらいました。そして九月。私は大きな決断をしました。

部活を辞めました。私は部長をやっていたという理由もあって、辞めるなんてこと絶対にあり得ないと思っていたし、私自身、部活を辞めるという選択肢はありませんでした。ただ、私は学生。勉強と部活、となると手を離せるのは部活しかありません。勉強からは絶対に逃げられない。部活は勉強の次。担任の先生がそうおっしゃいました。一定期間休部するとか、他にもたくさん悩んで悩んで悩んで、めっちゃ悩んだけど部活を辞めるという選択をしました。それから、高校三年生になるまで、部活をやっていない普通の高校生として毎日を過ごしていました。部活を辞めたら一気に縛りから解き放たれた感覚がして、心も軽くなって、悩んでいた時よりかずっと楽になりました。

そのまま私は高校三年生になりました。新一年生の部登録がされる一週間前、顧問の先生から呼び出されました。話を聞くと、もう一度大会に出ないか、放送部に入らないかというお誘いでした。私が放送部を辞めることを決めたとき、自分のなかに一つだけ心残りがありました。それは、大会で全国への切符を勝ち取れなかったことです。この日、私の中の心残りを消せるチャンスをいただきました。顧問の先生とは喧嘩して部活を辞めたわけじゃありません。でも、私からもう一度放送部に入りたいというのは、部活を辞めたことを後悔しているみたいで嫌でした。なので、大会のお誘いをいただいたとき、内心すごく嬉しかったのを覚えています。先生からのお誘いの返事は、誰にも相談せずに、自分の気持ちだけ考えました。すぐにもう一度部活に入ることを決めました。それを担任や両親に伝えて、私は今こうしてもう一度放送部に戻ってきて、過去の思いを今、この場で、伝えることができています。

皆さんの中ではこの決断はそんなに大きなものじゃないかもしれないけど、私の高校生活は一生忘れられないものになりました。十八年間生きてて、一番涙を流したし、自分と見つめ合った年でした。

この経験から、部活の存在の大きさ。そして、ありがちなことだけど信頼できる人の大切さに気づきました。この部活を選んで良かった。もう一度戻ってきてよかった。部活動での経験は、たとえどんな形であっても、必ずみなさんの将来に役立ちます。最後に中高生のみなさんに一言。部活動、めちゃめちゃありだと思いませんか?