加藤ひかるさん(三重・神戸高校3年)は、放送部員として活動に力を注いでいたが、心が限界を迎え退部。だが、一度辞めた部活に再入部を決意した、その結果、自身にどんな変化が起きたのか、弁論の全国大会で発表した。(文・写真 椎木里咲)
放送部で充実した忙しい毎日
高校に入学して放送部に入り、アナウンスやラジオ番組作りに励んでいた。1年生の時に初めて出場した県大会では、アナウンス部門に出場した1年生で唯一奨励賞を受賞。他にも学校行事での司会、地域のイベントに参加など、忙しいながらも充実した日々を送っていた。
「部活への向き合い方」に溝
2年生になり、部長に選ばれた。しかし、だんだん周囲の部員と自分の、部活への向き合い方が変わってきたと気づいた。「部活の雰囲気に耐えられなくなっていきました」
夏休み明けに、同期が2人やめた。何もかも嫌になって、全部投げ出したくなった。勉強にもついていけず、「なんでみんなは授業が分かっているのに、私だけ分からないんだろう」「自分の努力が足りないと分かっていても、そんな自分が大嫌いで許せない」と、自身を責めた。
「部長がやめるなんて」葛藤しつつ退部
唯一相談できたのが、入学当初からの担任の先生だった。「親にも『部活をやめたい』『勉強についていけない』なんて話したことないのに、担任の先生には話せました」
担任は驚きつつも「つらいならやめていいんじゃない?」と親身になってくれた。何度も相談し、9月に部活をやめた。「部長の私が『やめる』なんてありえないと思っていました。担任の先生からは『部活は勉強の次、勉強からは絶対に逃げられない』と言われて、部活を手放す決断をしました」
退部後は「一気に縛りから解き放たれた感覚」がした。「心も軽くなって、悩んでいた時よりずっと楽になりました」
「もう一度大会に出ないか」と誘われ
再び転機が訪れたのは、3年生の春だ。新入生が入部する1週間前、放送部の顧問の先生から呼び出され、「もう一度、大会に出ないか」と誘われた。
「全国大会に出られなかったのが心残りだったので、内心すごくうれしかった。後輩も『戻ってきて』と言ってくれたけれど、内心『1回やめたのに戻ってきたんだ?』と思われそうで、悩みました」
自分の心と向き合い、もう一度放送部に入る決心をした。「やりたい」気持ちが不安に勝った。
放送部の活動は「私の高校生活の全部」
1年時に9人いた同期は、加藤さんを含めて3人になっていた。練習を重ねて県大会に出場し、結果は奨励賞。全国大会には進めなかったが、後悔なく部活を引退できた。
自身の経験を「第49回全国高校総合文化祭(かがわ総文祭2025)」の弁論部門で発表した。「やめたことも後悔してないし、距離を置いたからこそ楽しめた。この部活を選んでよかったです」


















