「もっと身長を伸ばしたい!」と考える高校生は多いのではないだろうか。姿勢を見直すことで、身長が高くなる可能性がある。成長期の体の変化や、身長を伸ばすために意識すべき点について、姿勢に詳しい北里大学の高平尚伸教授(スポ―ツ理学療法学)に聞いた。(黒澤真紀)

高校生でも身長が伸びる可能性あり

―身長はいつまで伸びるのでしょうか。

身長がいつまで伸びるかは人それぞれです。成長のタイミングには個人差があります。

―高校生世代は成長期のピークが過ぎている印象ですが、身長は伸びる可能性はありますか?

小中学生で急に伸びる人もいれば、高校生になってからグッと伸びる人もいます。一般的に「成長期」と呼ばれる期間が終わってからも、骨の成長線が残っている間は伸びる可能性があります。ですが、大学生になると成長が止まるのが私の印象です。スポーツ選手で20歳を過ぎても身長が伸びた方もいると聞いたので、例外もあるかもしれません。

―骨の成長線はどうやって確認するのでしょうか。

レントゲンを撮ればわかります。ただ、被曝のリスクもあるのでわざわざやらなくてもいいと思います。

正しい姿勢で身長が伸びることも

―身長を伸ばすために普段の生活でできることはありますか?

猫背や姿勢の崩れが原因であれば、正しい姿勢を意識するだけで2~3cmほど身長が高くなる人もいます。ストレッチを続けた数週間後に姿勢が良くなり、周囲から「身長が伸びたね」と言われた例もあるんですよ。

女子は成長期に身長が早く伸びる人が多く、「周りと比べて自分だけが大きい」と気にして縮こまった姿勢になり、身長が低くなってしまうことがあります。猫背を引き起こし、体に負担をかける原因にもなるので注意してください。姿勢を整えれば身長が実際に高く見えるだけでなく、健康面でも良い影響が期待できます。

関連記事:「正しい姿勢」はどんな姿勢?

正しい姿勢の確かめ方

「筋肉を伸ばす動作」を取り入れて

―取り入れた方がよい生活習慣はありますか?

運動をしていない高校生には、ラジオ体操のように全身を使う運動がおすすめです。ラジオ体操は簡単で全身の筋肉を満遍なく動かせるため、日常に取り入れやすく効果的です。

「筋肉を伸ばす動作」を含む運動もよい選択です。具体的には、ジャンプ、ぶら下がり運動、鉄棒。運動ならバレーボールなどが挙げられます。体全体の柔軟性やバランスを向上させるだけでなく、姿勢を整える効果も期待できます。無理なく継続できる運動を選び、習慣化するのが大切です。

―成長期ならではの気を付けることはありますか?

身長が急に伸びると、筋肉がその成長に追いつかず硬くなる場合があります。骨が急激に伸びた際、筋肉の柔軟性が足りないと、体に負担がかかりやすいです。

スポーツをしている人では、大腿四頭筋が骨の成長に追いつかず、膝周辺に痛みが出る「オスグッド病」になることも。筋肉を柔らかく保つためにストレッチを取り入れてください。

「骨を切って身長を伸ばす治療」は危険も

―身長を伸ばす治療はありますか?

整形外科で行われる「骨延長術」があります。主に事故や病気で片足が短くなった場合に使われる治療です。足の骨を切って専用の器具をつけ、1日に約1ミリ程度伸ばします。身長を伸ばす目的ではなく、事故や病気で足の長さに差がある場合に行われる治療です。骨と一緒に神経も伸ばされるため、足が動きにくくなったり、再骨折しやすくなるリスクも。現在、問題のない状態からさらに身長を伸ばそうとすると、逆に体へ悪影響を及ぼす可能性があります。 

たかひら・なおのぶ 北里大学医療衛生学部・[健西1] 大学院医療系研究科教授。整形外科、スポーツ医学、スポ―ツ理学療法学や運動器(整形外科)リハビリテ―ションに関する幅広い研究を行う。科学的根拠に基づいたリハビリやストレッチ法を提案。『つらい痛みや不調が消える 家でできる 超快適ストレッチ』(KADOKAWA)など著書を多数執筆。
 

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