スマホを長時間使ったり、授業中や勉強で座りっぱなしが続いたりすると猫背になりやすい。姿勢が崩れると、肩こりや頭痛などさまざまな不調が現れることも。高校生の猫背をどう改善すればよいのか。姿勢に詳しい北里大学の高平尚伸教授(スポ―ツ理学療法学)に聞いた。(黒澤真紀)
スマホが猫背を悪化させる
―高校生が猫背になる原因は?
一番大きな原因は、スマホを頻繁に使う習慣です。LINEやSNSなどで、長時間スマホの画面を見続けると思いますが、画面と顔を近づけようとして首が前に出て、背中を丸める姿勢になりやすいんです。

授業や勉強で長時間座り続けるのも猫背になりやすくなります。人間は、長時間同じ姿勢でいると筋肉が硬くなり、姿勢も悪くなります。座っている姿勢は、骨盤が後ろに傾きやすくなり、猫背になりやすいんです。
高校生がなりやすい猫背は3種類
―猫背にも種類があるのでしょうか?
猫背にはいくつか種類がありますが、高校生には「首の猫背」「背中猫背」「腰猫背」が特に多く見られます。
―高校生がなりやすい猫背にはどのような特徴がありますか?
「背中猫背」は女子に多く、骨盤が前に傾いて反り腰になり、背中が丸まってしまいます。一見すると姿勢が良さそうに見えますが、実際には全体のバランスが崩れています。
一方、男子は骨盤が後に傾いて腰を丸めた姿勢を取りやすく、「腰猫背」になりがちです。首が前に出て腰が曲がるなど、首の猫背と腰猫背が同時に起こる場合もあります。
「首の猫背」は、頭が前に突き出た状態で、首が前に傾き、肩や背中が丸まった姿勢です。
肩こりや頭痛の原因に
―猫背によってどのような体の不調が起こりますか?
肩こり、首の痛み、後頭部の痛み、頭痛、疲労感などがあります。筋肉の凝りが原因の頭痛は、じわーっとした痛みが続きます。
高校生ではさほど心配いりませんが、放置すると内臓に負担がかかり、大人になって逆流性食道炎などの症状が現れる場合があります。
―なぜ猫背が痛みを引き起こすのでしょうか?
筋肉が硬くなると血流が悪化し、乳酸がたまります。さらに悪化すると、痛みを引き起こす物質が分泌されるようになるからです。
「万能ストレッチ」で不調改善
―猫背を改善するために、普段の生活で何を[健西3] 意識すべきでしょうか。
筋肉は、縮こまって固まる「こり」と、引っ張られて伸ばされた状態の「はり」があります。「こり」と「はり」を混同せず、それぞれに適したケアで血流の改善が大事です。
「こり」は筋肉が縮こまっているため、ストレッチで伸ばすと効果的です。「はり」は筋肉が引っ張られて伸びきっているため、筋トレで弱まった筋力を補い、前後や左右の筋肉のバランスを整えると良いです。
―ストレッチのやり方を教えてください。
私が考案した「万能ストレッチ」があります。本来、四つん這(ば)いで行うエクササイズを立って行うストレッチです。

- ①壁の角に立ち、両手を左右の壁につけて片脚を前に出し、腰を落とす。
- ②顔を上げて上を見ながら20秒キープ。
- ③ひじを曲げ、体を壁に近づけて20秒キープ。
- ④片脚のひざを伸ばし、つま先を上げておへそを覗き込むようにして20秒キープ。
- ⑤足を入れ替えて繰り返す。
忙しい高校生にもおすすめなので、歯磨きのように習慣にしてみてください。継続すれば体の調子がどんどん良くなります。
筋トレとストレッチは、バランスよくどちらも行ってください。どちらか一方だけに偏ると効果が十分に得られません。筋トレだけでは柔軟性が不足しますし、ストレッチだけでは筋力が不十分になってしまいます。
鏡や壁を使って「理想的な姿勢」をチェック
―そもそも「理想的な姿勢」とは?
骨盤をたてた姿勢が「理想的な姿勢」です。背骨が自然とS字カーブを描くので、重い頭をばねのようにクッションで受け止めてくれます。「骨盤を立てる」には、椅子に浅く座って上体を前に倒し、お尻を座面と背もたれの角に押し込んでから背筋を垂直に起こしてみてください。

立った時は、鏡か壁を使って確認できます。鏡の前で横向きに立ち、耳の穴、肩、大転子(股関節付近)、膝、くるぶしが一直線に並んでいるかを確認します。壁を使う場合は、背中を壁につけて立ち、頭、肩、背中、お尻、かかとが自然に壁に触れるかを確認します。
最初は違和感があるかもしれませんが、姿勢を維持する習慣をつければ、体のバランスが整いやすくなります。
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