高校生が国連加盟国の大使役になって、地球規模の問題の解決策を議論する「第19回全日本高校模擬国連大会・本大会」(グローバル・クラスルーム日本協会など主催)が11月15・16日、国連大学(東京)で開催された。小林聖心女子学院高校(兵庫)と、渋谷教育学園渋谷高校(東京)のペアが最優秀賞に選ばれた。(久保田真央)
国連大使になりきり決議案を提出
模擬国連とは、ペアを組んで「国連大使」になりきり、担当する国や他国の利益を追求していきながら、最終的に交渉結果をまとめた決議案を提出する大会だ。今回は、予選に参加した249ペア498人の中から、勝ち残った84ペア168人で競った。参加者は過去最多だった。運営スタッフによると年々増えていると同時に、レベルも上がっているように感じる」という。
デジタルの言論空間で表現の自由と共生を考える
今回の議題は、「デジタル公共圏のガバナンス―表現の自由と多文化共生社会―」。SNSなど、誰でも発信できるネット上で意見交換する公共の場において、表現の自由と共生を考えるもの。世界では文化や宗教、価値観が多様な中、デジタル空間で自由を守りつつ、分断や差別を防ぐかが問われる。SNSをよく活用する高校生にとって、自分事としてとらえられる議題だ。
準備の段階で参加者自身が自国の利益を踏まえたうえで、議題をどうとらえるかが注目された。運営スタッフによると、今大会の交渉は「国家の安定とその地域の文化価値の保護という、二つのバランスをどうとっていくか」が重要で、国家間でのバランスの認識差を、いかに近づけていくかが焦点となった。
リーダーは「ならせてもらう」もの
議場はA、Bの二つに分かれて実施された。A議場では、チュニジア大使を担当した永原泉さんと北場千晶さん(兵庫・小林聖心女子学院高校、ともに2年)が最優秀賞に輝いた。
交渉において、自分たちがリーダーとして主体的に動くだけでなく、周りの意見を傾聴する姿勢を大切にした。「リーダーというのはなるものではなく、ならせてもらうものなので、みんなの意見を反映できるように、話せていない大使にも声掛けを行うことを意識しました。各国の大使に個別で問題を引き出し、一つ一つの問題を解決してから全体に発表するよう心がけました」(北場さん)
大会の魅力は交渉を「楽しむ」こと
B議場では、日本大使を務めた小島杏里さんと丹羽太郎さん(東京・渋谷教育学園渋谷高校、ともに2年)が最優秀賞を受賞した。
「実際の外交で日本大使ならどのように振る舞うか」を考えたうえで、各国が生き生きとして交渉できるような場づくりを心がけたという。「純粋に楽しいと思える内政や外交を行いました。グループのみんなが楽しく話せているのを見て、自分の中でやっていてよかったなと思います」(丹羽さん)
「自分たちも含め、普段は友達の関係性である参加者が、全員本気で取り組んでいる姿を見るのが楽しい。それが模擬国連の魅力だと考えています」(小島さん)
表彰式で受賞が発表されたペアは涙を流し、固く抱き合う場面も見られた。入賞したペアのうち、上位4ペア(主催者規定により、1校1ペアに限定、被った場合奨励賞受賞校に参加資格が移行)は来年4月、ニューヨークで開催される高校模擬国連国際大会に日本派遣団として出場予定だ。
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結果
最優秀賞
A議場:小林聖心女子学院高校A(チュニジア大使)※
B議場:渋谷教育学園渋谷高校A(日本大使)※
優秀賞
A議場:公文国際学園高等部A(ナイジェリア大使)※
B議場:渋谷教育学園渋谷高校B(中国大使)
奨励賞
A議場:海城高校B(セルビア大使)
B議場:灘高校A(インド大使)※
ベスト・ポジションペーパー賞
A議場:西大和学園高校B(ウクライナ大使)
B議場:開智高校B(ブルキナファソ大使)
※はニューヨーク派遣チーム


















