大事な受験本番前、風邪やインフルエンザなどにかかってしまったら不安ですよね。早く回復するにはどうすればよいのでしょうか。入試直前の今、知ってほしい体調管理と感染症予防について、免疫に詳しい医師の清益功浩先生に教えてもらいました。(木和田志乃)

■目次■
1、風邪っぽい時はどうする?
2、受診のタイミングは?
3、家族からの感染を防ぐには?
4、直前期に気を付けたい生活習慣は?

風邪っぽい時はどうする?

―「風邪っぽい、体調が怪しい」と感じたら、本格的に発症しないようにできることはありますか?
 免疫力を落とさないようにするために、まずはよく寝てよく食べるのがいいでしょう。
※免疫力を上げる「適切な食事と睡眠」の詳細はこの記事をチェック
 風邪を治す特効薬はありません。あくまでも出た症状を抑えるために薬を飲むことになります。例えば、風邪をひくといつもせきが出る人が、体調が悪くなったからとせき止め薬を早めに飲んでもせきが出るのを止められるわけではありません。

風邪っぽい時に無理して勉強はやめよう(写真はイメージ)

「風邪かな?」と思った時、受験生は無理して勉強しがちですがそこはこらえて睡眠をよくとって、無理をしないことが大事です。体温が下がって免疫が低下しているときに、たまたま病原体が体内に入って感染したり、もともと体内にあったウイルスが増えて発症したりしてしまうケースもあるので、冷えないように温かくしてください。

―漢方薬を予防的に飲んでもいいですか?
 
それも一つの方法ではありますが、体調にうまく合わせて漢方薬を服用するのが難しいです。体力が落ちているときに免疫力を高めるのは「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」と言われる薬で、「インフルエンザワクチンを接種しただけ」の群と「インフルエンザワクチン接種+補中益気湯を服用した」群では、後者のほうがインフルエンザ発症率が低かったという報告もあり、漢方薬の中には予防効果のあるものもあります。

体調にうまく合わせて漢方薬を服用するのは難しい

ですが、どんな体の状態でどの漢方薬を飲むかを判断するのは家庭では難しいと思います。葛根湯(かっこんとう)や麻黄湯(まおうとう)は感染して症状が出てから効く漢方薬で、予防的に飲んでも効果が少ないと考えられています。

受診のタイミングは?

―受験直前、風邪などの感染症になってしまった場合、早く治す方法はありますか?
 
通常の風邪の場合、病院に行くか、家でじっとしているかになります。受診するかどうかは、1日で熱が下がることもありますから判断は難しいですよね。基本的には家で休んでいるようにすればいいですが、せきがあまりにもひどい、熱が高くてしんどい時は病院を受診して症状を緩和する薬を処方してもらって服用するのがいいと思います。

インフルエンザや新型コロナの場合は薬があります。合併症や重症化を防ぎ、症状が出ている期間を短くできる可能性が高いので、医療機関を受診して検査・診断をしてもらって薬を処方してもらって飲んでください。体内のウイルス量が減りやすくなります。

体調に合わせ受診するか判断しよう(写真はイメージ)

ただ熱が出てすぐに検査をしても検査で陽性になるウイルス量が足りなくて陰性となり、翌日、再度検査して陽性と判定されることもあります。そのため他にけいれんや脱水などの症状がなければ1日たってから検査をする方が何度も受診しなくてもすみます。体の状態が許せば少し待って受診すると検査による診断されやすくなります。

家族からの感染を防ぐには?

―家族が風邪などの感染症になった場合、うつらないようにするには?
 
感染した人との距離が短く、接触時間が長く、間に遮蔽(しゃへい)物がなければ感染する可能性は高くなります。家庭では可能な環境ならば部屋を分けるのがスムーズで現実的な方法です。

キッチンやトイレ、浴室などは共用場所では時間をずらすことも必要かと思います。食事の時に感染者がせきやくしゃみをすればうつってしまいますので、接触を避けるために別々にしたり、入浴も受験生が最初で、感染者は最後にするといった工夫をしてください。

家族が感染したら可能ならば部屋を分けて

直前期に気を付けたい生活習慣は?

―普段の生活で感染症にならないように気を付けたほうが良いことはありますか?
 
この時期は多くの人と同じ場にいることになる外食を避けて自宅で食事をした方がいいですね。ただ注意点もあります。冬は鍋を家族で囲んで食べる機会もありますが、自分の箸で具材を取り分けている人もいるのではないでしょうか。グラグラと煮えている鍋ならば箸に付着していた細菌やウイルスは鍋で煮沸されて、多くは死んで感染力がなくなってしまいます。ただ煮えていない鍋なら細菌やウイルスは残ってしまいますから、取り分ける際の箸は代えるのが無難です。大皿に盛った料理も同様です。

 

清益功浩先生
 きよます・たかひろ 大阪府済生会中津病院免疫・アレルギーセンター部長。小児科専門医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、市立岸和田病院、京都医療センターなどを経て、現職。