幅広い領域の学問をカバーする工学部。コロナ禍を経て、学びはどのように変わったのだろうか? 2022年9月に「メタバース工学部」を新設し話題となった東京大学大学院工学系研究科長・工学部長の加藤泰浩先生に聞いた。(野口涼)
AIの活用が加速
—コロナ禍や人工知能の発展で、工学部での学びはどう変わりましたか?
コロナ禍を機に工学教育のグローバル化が進んでいます。海外の著名な先生にZoomでレクチャーしてもらったり、海外の学生とオンラインで交流したりといった学び方の広がりも加速してきました。
また、今は工学部のほとんどすべての学科が、従来の研究とAIを組み合わせるということを強く意識しています。最近注目されているChat(チャット)GPTをはじめ、AIを使うべき方向で有効に使っていこうという機運も高まっており、大学におけるAI人材の育成が強く求められているのも確かです。
ただしAIというのは手段でしかありません。実は何かと組み合わせることによって初めて有効になる。あくまで化学や物理といった自分の専門分野をベースに、今後はAIの有効な活用方法を見いだしていく能力も必要とされていくということだと思います。
全世界とつながれる「メタバース工学部」
—昨年9月に設立された「メタバース工学部」では何ができますか?
メタバース空間(インターネット上に構築された仮想空間)やオンライン上で、場所や属性による制限を受けることなくさまざまな工学教育プログラムを受講できるのがメタバース工学部です。中高生であっても東京大学の教員や学生はもちろん、全世界の学生とつながることができます。
今のところ参加してくれる高校生のほぼ半分が女子。工学部の女子学生比率は東京大学では10%ほどなので、工学に興味を持っている女子がこれほど多いことにうれしい驚きを覚えています。今後は他大学の学生や社会人などにも積極的に参加してほしいですね。