工学部は、医療分野や人工知能分野から建築分野まで、カバーする領域が極めて広い。東京大学大学院工学系研究科長・工学部長の加藤泰浩先生に、工学部に向いている人の特徴や、高校時代に身に着けておいた方がよいことを聞いた。(野口涼)

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地道に研究続ける力が必要

—どんな高校生が工学部に向いていますか?

工学部の研究を個々に見ていくと「まるでSFのようだ」と感じる高校生もいるかもしれません。だからといって工学の研究者は空想的な発想ができたほうがよいかといえば、それはあまり関係ないように思います。

「サイエンスをどう社会に役立てていくか」という発想は、やはり学問的なベースがあってこそ。地道な研究をしながらだんだん分かってくることが、新しい研究につながっていきます。

社会貢献したい気持ちはある?

—工学部と理学部、高校生は進路をどう選択したらいいでしょうか。

私自身もそうでしたが、理学部の学生は「知りたい」「理解したい」という気持ちがとても強い。そこから発展して「社会に貢献したい」と考えるのであれば工学部で学ぶのがいいのではないでしょうか。理学部でできることは工学部でもできますし、理学部ではできないことも工学部ならできる。あれもこれもやりたいというタイプの高校生には工学部が向いているように思います。

英語は高校でしっかり学んで

—工学部を目指す高校生が身につけておいたほうがよいことは?

数学や物理、化学などの理系科目を勉強することはもちろん大切ですが、それらが不得意だからといって「自分は工学部に向かない」とは思ってほしくありません。自分の得意分野をしっかりと伸ばすことができれば、大学院から工学に進む道もあります。

ただし、今の時代、理数系の学部に進む場合も英語は非常に重要です。高校でしっかり英語を勉強してきてください。

——工学部を目指す高校生にメッセージをお願いします。

もし私が研究している「レアアース」でノーベル賞を取るとしたら「化学賞」、そして資源を巡る国際的な争いがなくなることによる「平和賞」のダブル受賞になるかもしれません。工学とはそういう可能性のある学問です。

加藤教授が行ったフィールドワークの様子

といってもノーベル賞はなにも現在現役の研究者が取る必要はありません。私たちの研究を引き継ぎ発展させた学生が、数十年後にノーベル賞に届くかもしれない。そのことを願ってやみません。「工学の未来は高校生の皆さんが拓く」ということをお伝えしたいです。

 

加藤泰浩(かとう・やすひろ) 埼玉県立浦和高校、東京大学理学部地学科卒業。同大学大学院理学系研究科博士課程(地質学専攻)修了。理学博士。専門は地球資源学・環境学。 2023年4月より現職。千葉工業大学次世代海洋資源研究センター所長兼担。