薬のスペシャリストである薬剤師。どんな人が向いていて、どんな力が求められるのだろうか? 薬学部を目指す高校生の疑問に、明治薬科大学の越前宏俊学長、齋藤望教授、林弘美教授、服部研之教授に答えてもらった。(野口涼)
「コミュニケーション力」がより必要に
―これからの時代、薬剤師にはどんな力が求められますか?
越前 人と関わる力がますます必要になってくると思います。患者さんとコミュニケーションする際はもちろん、病院薬剤師なら手術室や救急の現場などで医師、看護師などの他の医療職と連携して患者さんに対応します。
さらに在宅医療が推進されるなか、薬局薬剤師にも地域医療への関わりがますます求められるようになってくるでしょう。

「真面目でコツコツ」タイプの学生が多い
―薬学部に向いているのはどんな人ですか?
越前 昔から薬剤師には「几帳面で正確な人」が向いていると言われてきましたが、最近では加えて、前述のようにコミュニケーション能力が求められるようになってきました。
林 ただ、やはり真面目でコツコツ努力できるタイプの学生が多いように思います。
―どんな高校生に薬学部進学を目指してほしいですか?
越前 探究心がある人です。それから僕自身は元気のある、リーダーシップが取れる人にも入学してきてほしいと思っています。
理科の勉強はしっかりと、物理も必要
―薬学部進学や薬剤師を目指す高校生は、高校時代にどんなことをやっておくべきですか?
服部 薬剤学などでは「現象を定量的に評価する」という物理の考え方が使われることが多々あります。入試科目として選択していなくても、物理の考え方を身につけておくことが大切だと思います。
齋藤 理科は薬学を支える学問です。本学の学生の様子を見るに、中でも物理についてはあまり得意ではない人が多いようですが、入学してからつまずいてしまうことのないよう、高校の理科はきちんと勉強してきてください。
林 薬学部の学びは幅広いため、高校時代のさまざまな経験が生きてきます。チーム医療に貢献できるコミュニケーション能力やリーダーシップを養うためにも、いろいろなことに挑戦し、有意義に過ごしていただければと思います。
齋藤望(さいとう・のぞみ)
1972年北海道旭川市生まれ。91年旭川東高校卒、95年北海道大学薬学部卒、2000年同大学大学院薬学研究科博士課程修了。博士(薬学)。専門は有機合成化学、有機金属化学。
林弘美(はやし・ひろみ)
1964年東京都武蔵野市生まれ。83年国立高校卒、87年お茶の水女子大学文教育学部卒、93年同大学大学院博士課程人間文化研究科単位取得退学。博士(言語学)。明治薬科大学では薬学英語などの授業を担当。
服部研之(はっとり・けんじ)
1970年生まれ。89年長崎県立長崎東高校卒、93年東京大学薬学部卒、98年同大学大学院薬学研究科博士課程修了。博士(薬学)。専門は衛生化学、毒性学。
越前宏俊(えちぜん・ひろとし)
1954年北海道生まれ。72年函館ラ・サール高校卒、78年北海道大学医学部医学科卒。78年国立国際医療センター内科、その後米国およびドイツ留学。86年博士(医学、東京大学)。専門は臨床薬理学・消化器病学。2020年より現職。