2026年度の全国の大学で予定されている、新しい学部や学科の傾向を、河合塾教育研究開発本部で主席研究員を務める近藤治さんに聞いた。地方大では地元で活躍できる人材育成を目指した学部設置の動きがあり、工学科ではコース制導入が目立つという。(野村麻里子)

工学科でコース制導入が活発

国立大学では、信州大工学部が5学科を1学科10コースに、山口大工学部が6学科を2学科12コースに再編するなど、工学系学部を中心に複数学科を1~2学科にまとめ、コース制を導入する動きがある。「自動車を例にすると、基本は機械工学ですが、現状は情報通信や電子制御など複数分野の知識が必要です。コース制にすれば、コースをまたがって学習できるメリットがあります」

2026年度新設学部一覧(河合塾の調査結果(9月9日時点)から編集部が一部大学を抜粋)

良いことばかりに見えるが、注意点も。「将来を見据え照らし合わせて、何をどう学ぶか設計を自分でできないといけない。学生の主体性がかなり問われます」

地元産業の特色を生かす

化学や生物学などの観点から化粧品を研究する佐賀大コスメティックサイエンス学環の新設が目をひく。「昔は、国立大と言えば文・経済・教育といった漢字1・2文字の学部しかありませんでした。23年度に新設された一橋大学データサイエンス学部も珍しくカタカナを用いて話題になりました」

2026年度新設学科一覧(河合塾の調査結果(9月9日時点)から編集部が一部大学を抜粋)

化粧品産業は佐賀県の地場産業だ。恐竜を観光資源とする福井県で、福井県立大学が恐竜学部(25年度設置)を設置したことからも言えるように、地方大学では地元の特色を生かした学部学科の新設の動きがある。

地域に根差した人材育成

公立大学の新設学部は、旭川市立大地域創造学部、福井県立大地域政策学部、長野大地域経営学部のように「地域」を冠した学部が目立つ。卒業後に地元に残って地域創生などで活躍できる人材育成のための学部だ。「(地域貢献できる人材輩出という)公立大学の設立趣旨に沿った学部が誕生しているのが特徴と言えます。地元に残りたい地方の受験生にとっては朗報でしょう」

有名私大で設置が目立つ

有名私立大学で、新学部設立の動きが目立つ。中央大は理工学部が基幹理工・社会理工・先進理工の3学部に分かれる。亜細亜大はデジタル技術を駆使した健康スポーツ科学部を設置。東京理科大は既存の学科を再編して創域情報学部関東学院大情報学部立教大環境学部を新設するなど、デジタルや環境系の学部学科が目立つ。「立教大環境学部は河合塾の模試では倍率が10倍を超え、早くも人気沸騰です」

東京理科大学は創域情報学部を新設する(野田キャンパス。大学提供)

時流をくんだ学びを計画

近畿圏では、起業家精神を持った人材育成を目指す京都産業大アントレプレナーシップ学部、近畿大看護学部などが新設予定。「立命館大デザイン・アート学部は、実技系の試験を入試で課されず、文理双方が受験できる科目設定。新しい時代のデザイナーを養成したいということなのでしょう」

立命館大学はデザイン・アート学部を新設する(衣笠キャンパス。大学提供)

人文社会系のイメージが強い桃山学院大は、初となる理系の工学部を設置。「文系大学に理系学部を設置する近年の流れの一環でしょう」

学科新設では、東京理科大理学部に科学コミュニケーション学科関西大システム理工学部にグリーンエレクトロニクス工学科明治大政治経済学部に政策学科などが新設予定だ。

 

 

こんどう・おさむ 学校法人河合塾 教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。情報発信や講演も多数実施。