学部を選ぶ際、卒業生の就職状況も気にしたいところだ。東京大学大学院工学系研究科長・工学部長の加藤泰浩先生に、「工学部」の就職の実態を聞いた。(文・野口涼、写真・東京大学提供)
修士課程への進学者が多い
—工学部生は、学部(学士課程)卒業後すぐに就職せず、大学院に進む人が多いイメージがあります。
学士・修士・博士と進むにつれ、学生たちは当然ながら研究を深めていきます。東京大学の場合、工学部の学生のほとんどが修士課程に進学しますが、博士課程まで行く学生の比率はかなり下がる。しかし、学部時代に卒論に取り組むことからスタートした研究が修士課程のある時点から一気に面白くなることがあり、そうなった学生が博士課程に進むんです。
自分の研究が面白いと思えたらとことん突き詰めていく。高校生の皆さんにもそんな学びを体験してほしいと思います。
企業から直接スカウトも
—工学部の就職は有利と聞きます。
就職は非常に有利です。まず今は多くの大学の工学部で「産学連携」を行っており、その過程で優秀な学生が企業から直接スカウトされることが往々にしてあります。IT関係の研究室などに所属しているとグーグルやマイクロソフトなどのIT企業に最初から高待遇で迎え入れられることも珍しくありません。
工学部卒女性は特に有利
—工学部生は女性が少ない印象です。性差で就職状況は変わりますか?
近年、東証プライム上場企業においては「2030年までに女性役員の比率を30%以上に引き上げる」という国の方針もあって、数学的・理系的なセンスを持った工学部卒の女性が切実に求められています。
率直に言って企業としては「役員は数字に強くあるべき」という意識が高い。数理的な処理ができたり、データが理解できたりする女性の就職市場における付加価値は非常に高いといえるでしょう。工学部に進学し、将来は大企業の役員になるという道も大きく開けていますよ。