オープンキャンパスはただ何となく参加するだけでは、大学の施設や学食を巡るだけになりがち。自分に合った大学か確認するため、当日はどんなことを心がけるとよいのか、オープンキャンパスを活用しつくすためのポイントを進路指導アドバイザーの倉部史記さんに聞いた。(安永美穂)

一日に多くても2大学がベター

―1日に複数の大学に行ってもOKでしょうか?

地方在住の人が都市圏の大学をまとめて回るケースもあるため、一概には言えませんが、大学での学びの内容をしっかり理解するには、一日に回る大学は多くても二つまでにしたほうがよいでしょう。

個別相談で質問しまくれ

―オープンキャンパスでのおすすめの過ごし方を教えてください。

オープンキャンパスでは、大学のウェブサイトやパンフレットに書かれている網羅的な情報ではなく、自分にとって重要な情報を入手することが大切です。参加したいプログラムを事前に調べて必要に応じて予約をし、個別相談・質問のコーナーにはできるだけ立ち寄ることをおすすめします。

―個別相談では、誰にどんなことを質問すればよいですか。

誰に質問できるかは大学により異なりますが、大学の授業や研究については教員に聞くのがおすすめです。他大学との違いや、総合型選抜の面接で聞かれる内容など、気になることがあれば積極的に質問してみましょう。入試制度や学費、就職、留年や中退率、一人暮らしなどについては大学職員に聞いてみるとよいでしょう。

大学生の先輩に質問できる場合は、「この大学に実際に通ってみてどうですか」「周りに留年している人はいますか」「どの大学を併願しましたか」など、気になることを率直に聞いてみると、その大学のリアルな様子を知る手がかりになりますよ。

誰に何を質問する?

―悪い印象の質問をしたら入試に不利になるのでしょうか。

「こんなことを聞いてきたから、この高校生が出願してきたら不合格にしよう」……なんて、そこまでチェックしている教職員はいませんので安心してください。気になることは遠慮なく質問しましょう。

「何を学べるか」見失うな

―高校生がやりがちなNG行動を教えてください。

大学生の先輩への個別相談で、サークル活動やアルバイトのことばかり質問してしまうと、肝心の大学での学びに関することがわからないままになってしまいます。また、充実した施設や設備を見ただけで帰ってきてしまうと、学びの内容を踏まえて他大学と比較することができません。

オープンキャンパスに参加する目的は、「この大学に進学するとどのようなことが学べるのか」を知るということです。それを見失わないようにしましょう。

通学のしやすさ、治安もチェック

―キャンパス以外にチェックすべき場所はありますか?

一人暮らしを予定している場合は、大学周辺が安全・安心な環境かという点もチェックしておきましょう。一般入試の場合は合格後の物件選びに時間をかけられないケースもあるため、オープンキャンパスの時点で調べておくとイメージがつかめます。

実家から通う場合は、朝のラッシュ時の混雑状況を調べておきましょう。繁華街にある大学のほかに、郊外にある大学のオープンキャンパスにも参加し、通学環境も含めて比較検討してみることをおすすめします。田舎に暮らしていた高校生が都会に憧れて都心のキャンパスを選んだけれど、通勤ラッシュに耐えられずつらい思いをしているケースもあります。

見落としがちなポイント

ネガティブな情報を調べ直接質問

―悪い面も含めた「大学の本当の姿」を知るには?

大学のウェブサイトでは、中退率などのネガティブな情報は受験生向けのページとは別に「情報公開」のページに掲載されていることが多いので、オープンキャンパスに参加する前にチェックしておきましょう。そして気になることがあれば、当日の個別相談の場で質問してみましょう。

最近ではオープンキャンパスとは別に、普段の大学の一日を高校生が体験できる「ウィークデーキャンパスビジット」を実施している大学もあります。授業を受けている学生の様子を観察してみると、「後ろの方の席にはスマホをいじっている人や寝ている人もいる」といった発見があるかもしれません。

 

倉部史記(くらべ・しき)さん

進路指導アドバイザー、高大共創コーディネーター。追手門学院大学客員教授。高校生の「ミスマッチのない志望校選び」を支援するために、全国の高校での進路講演や高校・大学の教職員向け研修などを行う。