「ダニ」と聞くと、何をイメージしますか? 害虫のひとつですが、大島雅晴君(岩手・一関第一高校2年)は、ダニのフォルムのかっこよさに魅了され、研究に没頭しています、大島君が語るダニの魅力とは? たっぷり語っていただきました。
とにかくかっこいい姿のダニが好き
―ダニを好きになったきっかけは?
小学生のころ、『絵解きで調べる田んぼの生き物』という本に載っているミズダニの写真に魅かれたのがきっかけです。その後、その本に紹介されていた『ダニ・マニア』という本でダニに目覚めました。
―ダニのどんなところが好きですか? 魅力を教えてください。
ダニ類全体の魅力としては、多様性が挙げられます。昆虫が進出できなかった海にまで進出し、地球上のほぼすべての環境に生息しています。
僕はダニの中でもササラダニという分類群が好き。重荷土壌中に生息するダニで、人間に害を与えません。
甲虫のようにかたい殻を持っていて、形態の多様性には目を見張るものがあります。とにかくかっこいいダニが多いです。歩くのが遅いため、捕食を逃れるために進化した結果です。
そして、ササラダニは周囲の環境に応じて、種構成を敏感に変化させます。ササラダニの種類を調べれば、環境のよしあしが分かるのです。
極端に厳しい環境にもその場所に適応したササラダニが生息していて(ビルの屋上の乾燥した苔の中など)、まだまだ新しい種が見つかってきそうなのです。
人間に関係ない生物なので、あまり研究が進んでいないのも大きな魅力ですね。
イカのような形のダニがいる
―イチオシのダニの種類はありますか?
ダニに順位をつけるのはよくないですが(笑)、個人的にはヤマトオオイカダニが好きです。
ヤマトオオイカダニはとにかくフォルムが格好よく、見ていて飽きません。本当にイカのような輪郭ですが、前体部の造形美は半端じゃないです。
そして、まだ未発表なのであまり大声では言えないのですが、僕が東北で(記録上)初めて発見した種です。イカダニ科は南方系の種が多く、ヤマトオオイカダニは日本産で最も北まで生息している種ではあるのですが、分布は北陸までとなっています。
好きな種で、しかも自分で新生息地を発見できたダニなので、思いが強いです。
―今はどんな研究をしているのですか?
僕の研究テーマは「栗駒山におけるササラダニ群集の標高差」というもので、栗駒山の標高の低い部分と高い部分でのササラダニの違いについて調べています。
ダニ研究はとにかく作業量が多いので、何回も採集に行っていると研究が終わりません。そこで春に必要な分の採集を終えてしまいました。
―採取、大変そう。どんなことに気を付けていますか?
土を採ってくるだけでよいのですが、注意することがいくつかあります。
まず、その場所に生息するササラダニをもれなく採集するため、まんべんなく土を採ってくることです。実際は土だけではなくコケなども採って、より調査地全体のダニ相(=ダニの多い場所を調べること)を把握できるように工夫しました。そして、ダニたちが酸欠で死なないように、土は紙袋に入れる必要があります。
ダニの種類の判別は「まるで修行」
―土を採った後はどうするのでしょう…?
採ってきた土はツルグレン装置と呼ばれるダニを抽出する装置にかけます。
その後観察のためにダニを殺さないといけないのですが、今春はコロナの影響でエタノールが買えず、プロピレングリコールという薬品で代用することになりました。
その後、プレパラートにして種類を特定すれば終了となります。ですが、プレパラートを作る量も極めて多く、微妙な種類の違いを判別するのも大変なので、研究は困難を極めています。将来に向けての修行だと思って頑張っています。
新種のダニを発見したい
―高校では、どんな部活動に入っていますか? 活動内容も教えてください。
科学探究部という理科系の部活に所属しています。
一関一高がSSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されたことで創設された、できてから2年足らずの新しい部活です。部員は35人ほどです。研究は1人1テーマが基本で、好きなことについて自由に研究しています。
僕のほかに、古事記の研究、圏論を勉強している人、ダンゴムシの交替性転向反応について深めている人、声帯のモデルを作っている人などさまざまです。
―ダニの研究について、今後の目標を教えてください。
まずは今の研究をしっかり終わらせたいです。また、一関一高を日本で一番ダニ研究が盛んな高校にしたいので、後進育成に力を注ぎたいです。
あとは、夢でもある新種のダニを発見したいです。今あるサンプル内に入っている可能性が大いにあるので、楽しみに作業を頑張っています。