多彩な役柄を鮮やかに演じ分け、数多くの作品で主演を担ってきた俳優の松坂桃李さん。松坂さんに憧れる高校生読者から寄せられた相談や質問に答えていただきました。「人と比べてつらい」「いつも一緒に行動する仲間がいない」…10代が抱えがちな、そんな悩みに、松坂さんが真剣に向き合います。(文・中田宗孝、写真・中村博之、スタイリスト・小林新、ヘアメーク・高橋幸一)

人と比べてつらい時は「今自分ができることに全力を注いで」

―「容姿、勉強、部活での実力、私はいつも周りの友人と比べてしまいます。友人と自分を比べてつらくなるとき、どうすれば良いと思いますか?」と高校生から悩める声が届いています。ぜひアドバイスをお願いします。

自分を友だちと比べてしまうのは、誰にでもある自然なことだと思います。

高校生のみなさんからは大人にみえる僕も「誰かと比べるのはやめよう」と考えるようにはしているのですが、どうしても人と比べてしまう瞬間があるんです。「あの俳優さんは、あんなにいい作品で主役をやったのか……」「あの俳優さんは、あんなにすごい映画監督と何度も仕事してるのか……」と。

 

友だちと比べてしまうということは、自分にはない、「その人の何か」に憧れているんだと思うんです。僕が伝えたいのは、自分が今できることに手を抜くことなく全力で取り組めば、必ず想像以上の結果になってあらわれるということです。これは僕自身も実践しています。

大切なのは自分を信じること。「自分はできる、自分はなれる。焦らずいこう、コツコツやろう」。そう自問自答しながら、今の自分ができる努力をし続けてください。

一人が好きならそのままでも大丈夫だよ

―次の高校生からの質問です。「私には『イツメン(いつも一緒に行動する仲間)』という人がいません。一人でいるのが好きなので、誰かと一緒に行動することはめったにないんです。もしかしたら他人に興味がないのかも知れません。でも社会に出てからもこのままでいいのかと考えると不安です。無理やりにでも仲間を作ったほうがよいでしょうか?」

ふふ(笑)。僕も基本的に一人で過ごしたり行動することが多いので、質問をくれた高校生の心境がとってもよく分かります。

一人でもまったく問題ないですよ! この方はしっかりと自己分析ができていると思うのです。さまざまな物事に対して自分の中できちんとコントロールができる人。なので、一人でいるのが好きならそうすればいいと思うんです。

社会人になり仕事を始めると、いやが応でも誰かと関わらなくてはいけない場面が必ずあります。でも一人が好きだと自覚を持つあなたなら、公私を分けて考えられることができるはずなので、「今は仕事だから」と、仕事をするうえでの人間関係をちゃんと築けると思う。

そして仕事を離れたプライベートでは、一人の時間を思う存分、楽しむといいですよ。

一人の時間も楽しんで

この役を演じることは運命だった

―主演映画「あの頃。」では、アイドルの松浦亜弥さんを推す青年を演じています。この作品に出演を決めた理由を教えてください。

マネジャーさんから「松浦亜弥さんのファン役でのオファーが届いているんですけど、どうですか?」と聞かれて、即答で「やります!」と伝えました。どんな作品なのか? 監督はどなたなのかと聞かないうちに出演を決めたんです。

松浦亜弥さんファンを演じる松坂さん

なぜ即決したかというと、実は僕と松浦亜弥さんは同じ中学校出身で。しかも僕が中1のとき、松浦さんは中3。そんな背景があり、「母校の先輩のファンになる役……やるしかない!」と。なにか運命めいたものを感じました。

―松浦亜弥さんのいる「ハロー!プロジェクト」のアイドルたちに夢中になるハロプロのオタクを松坂さんが演じる意外性もありました。どのように“ハロヲタ”の役作りをしたのですか。

「あの頃。」の原作者の方は、筋金入りのハロプロオタクなんです。その方が頻繁に撮影の見学にいらしていたので、会話をしたりしぐさを観察したりすることで、どう演じれば良いのか、ヒントをもらえたように思います。

例えば、原作者の方は人とコミュニケーションを図るとき、正面からではなく、右から左から“くねくね”と近づいてくるんです。そんなしぐさを演技に取り入れました。そして何より、大好きなアイドルへの無償の愛を感じたんです。僕もその気持ちで演技に臨みました。

―松坂さんご自身も“ハロプロ”アイドルたちの魅力を発見しましたか?

はい。松浦亜弥さんの歌声は今聞いてもまったく色あせることないなって。先日、テレビ番組で元モーニング娘。の後藤真希さんが現役アイドルと一緒に歌っている姿を偶然拝見したんです。……もう圧倒的だなと。現役を退いて何年もたつのに衰えることなく、こんなにもキラキラしているのかと。本当にモーニング娘。のメンバーとして活躍したみなさんは今でも輝いていますね!

まつざか・とおり

1988年10月17日生まれ、神奈川県出身。2009年、特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」で俳優デビュー。主な出演作は、NHK連続テレビ小説「梅ちゃん先生」、映画「娼年」「孤高の血」「新聞記者」など。出演待機作の映画「いのちの停車場」「孤狼の血 LEVEL2」「空白」「耳をすませば」が今年公開予定。また、今春にはNHK土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの高感度について」で主演を務める。

映画「あの頃。」

 

うだつの上がらない日々を過ごす無名バンドマンの劔(つるぎ)(松坂桃李)は、友人にもらったDVDに映し出されたアイドル・松浦亜弥の輝きに衝撃を受ける。彼女の大ファンになった劔はひょんなことから、松浦亜弥やモーニング娘。がいる「ハロー!プロジェクト(ハロプロ)」のアイドルを愛してやまない個性豊かな男たちと出会う。彼らとハロプロ愛を連日語り合う“中学10年生”のような青春を満喫するのだが……。配給:ファントム・フィルム。2月19日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開。(C)2020『あの頃。』製作委員会