中村雛子さん(神奈川・相模女子大学高等部3年)は、2年のころ世界大会で金メダルを獲得するなど、実力あるバトントワーリングの選手だ。バトン一色の日常を過ごして高みを目指し続ける、挑戦の日々に迫った。(文・中田宗孝、写真・幡原裕治)

世界大会で金、感情の表現が得意

6歳のころ、バトンを始めた。手足の長さを生かしたダイナミックな演技が持ち味だ。「音楽をよく聴いて、自分の感情を表現するのが得意。世界観に入り込めるのも強みです」

バトン競技に打ち込む充実した毎日を語る中村さん

ソロのバトン選手としては、女子ジュニアの日本代表に選ばれるほどの実力の持ち主。高2の8月、スウェーデンで行われた「IBTF世界フリースタイル&リズミックトワール選手権大会」のフリースタイル個人女子ジュニア部門に出場し、金メダルに輝いた。

演技を動画に撮り表現力を磨く

普段の個人練では、高難度とされるバトン技の成功率を高めたり、演技中の表現力を磨いたりと、練習メニューはち密さを極める。

「振り付けと音楽とのマッチングも常に意識しています。曲中の印象的なメロディーに合わせて(バトン操作と身体表現を使った)フリが決まると、演技の美しさがより増すんです」

常に笑顔で軽々とバトン技を披露する中村さん

表現力を磨くために「自分の演技を動画に撮って『もっと手が伸ばせるな』などと振り返り、繰り返し練習しています」。

難技を涼しい顔で決める

学校のバトントワーリング部では、団体演技を中心に活動。横浜市のクラブチームにも所属し団体に加えソロの演技を磨き、バトン漬けの日々を過ごしている。

両立は体力的にもハードだが、「いい仲間に出会えた。部のみんなと楽しく過ごせているから、今も私は高いモチベーションでバトンを頑張れてる」と笑う。

<ある平日のスケジュール>

6時ごろ 起床

7時 登校

8時半~ 授業

16時~18時  部活の練習

18時~20時  体育館でソロの自主練習に打ち込む

21時半 帰宅して夕食など

23時ごろ ストレッチ

24時 就寝

※休日は、13時~16時に部活をした後、クラブチームに向かい18時~21時に練習

世界大会では映画音楽を選曲してパフォーマンス。「笑顔で!」「楽しむ!」をモットーに、華麗なバトン演技で世界一に輝いた 

顧問の對馬香織先生は「実際は猛練習を重ねて本番を迎えるのですが、難技を涼しい顔でやっているような孤高のオーラをまとうのが彼女の魅力」だという。「一方で、仲間との関わりを大切にし、部活では仲間と笑い合いながら楽しさを原動力にして練習する姿が印象的です」

代表落ちから奮起

中3のとき、日本代表選手にあと一歩のところで落選した経験が、中村さんをレベルアップさせた。悔しさから奮起し、「持ち技の難易度を一気に上げたんです」。

片足を側転のように上へと振り上げて回る「イリュージョン」、手を使わず首でバトンを回転させる「ネックロール」といった難技の精度を上げる練習に励んだ。

「難しい技はとにかく反復練習の繰り返し。演技中にミスなく安定的にその技ができるよう目指していきました」

腕、足、首といった体の一部を使ってバトンを回す技「ロール」を披露 

見る人の印象に残る演技を

世界大会での金メダル獲得後も、好調を維持。3月に出場した「第50回全日本バトントワーリング選手権大会」U-18部門では、「ソロストラット」(マーチのリズムの中で、優雅で気品のあるボディーワークとバトンの技術を競う種目)で優勝するなど、好成績を収めた。

8月に開催された「ジャパンカップマーチングバンド・バトントワリング全国大会」個人部門 高校生バトントワリング部門(3年生)で優勝した(学校提供)

高校卒業後もバトン競技を続けていく。中村さんには思い描く理想の選手像がある。「バトンを全然知らない人が私の演技を見ても『この人の演技すごい』『印象に残るね』と思ってもらえる。そんな選手になりたいです!」

【一言動画インタビュー】本番で実力を発揮するには?

―試合前のルーティーンは?