ドラマ「アンナチュラル」「MIU404」など数々のヒット作を手掛ける人気脚本家・野木亜紀子さんに高校時代をインタビュー。部活でテニスに明け暮れつつ、漫画や映画を楽しんでいた日々を振り返ってもらいました。(取材・櫻田結衣、赤羽柚香=高校生記者、構成・中田宗孝)

テニスに打ち込んだ高校時代

―どんな高校生活を過ごしましたか?

演劇に興味があり、中学生のときは演劇部でした。高校でも演劇に取り組もうとしたのですが、演劇部の雰囲気が合わなそうだと感じ、高校ではテニス部に入部しました。

部活動に打ち込んだ高校3年間でした。家でも筋トレをして自主練に励んだり、受験シーズンの高3のときも夏合宿に参加したりと、熱心に楽しく取り組んでいました。試合ではダブルスの選手で、背が高いので後衛でした。

野木亜紀子さん

漫画、映画、演劇…サブカルに触れる

―部活以外に何に関心を持っていましたか?

多くの漫画を読みあさり、映画もたくさん見ていました。休みの日には演劇鑑賞にも行きました。

―レンタルビデオ店でアルバイトをしていたそうですね。

バイト先の方たちからマニアックな映画や漫画を教えてもらったり、高校の友だちとはできないサブカル話で盛りあがったり。映画作品だったら「鉄男」(監督:塚本晋也)、漫画作品なら「寄生獣」(作者:岩明均)などの名作を一巻発売時点から追いかけて読んでいましたね。

―多くの作品を知ることは、脚本家としての第一歩だったのでしょうか?

メジャーからサブカルチャーまで、創作物が単純に好きだっただけなんです。脚本家の仕事につながる行動をしようとは当時まったく考えていませんでした。

「あぁ、高校時代に勉強しておけば…」

―「高校生のときにこうしておけば……」と思うような後悔はありますか。

これは勉強ですね。テスト前の「3日漬け」でしか勉強した記憶がないですから(笑)

高校生のときにもっと真面目に勉強していれば、世界史の知識や、英語が身についていたと思うんです。脚本執筆の際には、専門性の高い職業や分野について書く機会があります。毎回なにかしらの勉強が必要で、とにかく時間がない。英語やいろんなことを授業という形で学べる、あの時間を有意義に使えていればなぁ、もったいなかったなぁ……と思います。

合唱曲を作詞「直接的なメッセージソングにはしない」

―今年の「第92回NHK全国学校音楽コンクール(Nコン2025)」高等学校の部 課題曲「惑星そぞろ」の作詞を担当しています。

合唱曲の作詞を引き受けるかどうか、迷ったんです。時間もなかったし。ただ、断る前に試しに考えてみたら1日で「惑星そぞろ」の1番の歌詞ができたので、引き受けますと連絡しました。

「惑星そぞろ」を歌う高校生たち(写真・NHK提供)

―作詞制作のエピソードを教えてください。

「私たちの身近な日常とは異なる遠い世界を歌にしたい」「直接的なメッセージソングにはしない」とは、最初に思いましたね。

今年の課題曲のテーマは「空」だったので、空の向こうの宇宙まで広げて。普段あまり口にしない、何か面白いフレーズを使いたいと思いたち、浮かんだのが「そぞろ」でした。 

作詞は「なんでもあり」だった

―脚本の執筆と楽曲の作詞の違いはどう感じましたか。

ストーリーを構築しなくていいので、感じるままに「何でもありだな」と思いました。時間軸がめちゃくちゃでも、視点がコロコロ変わってもいいじゃないですか。

「惑星そぞろ」は、自分の記憶の中にある教室の空気感や匂いを思いながら作詞をしています。そして、「惑星そぞろ」を歌うみなさんがいろいろな想像をかき立てられる余地が生まれるような歌詞になればいいなと思いながら書きました。

のぎ・あきこ 1974年生まれ。東京都出身。2010年、脚本家デビュー。主な作品は、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ(海野つなみ原作)」、「アンナチュラル」ほか。23年にドラマW「フェンス」で第74回芸術選奨放送部門文部科学大臣賞を、25年に映画「ラストマイル」で第48回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。

第92回NHK全国学校音楽コンクール(Nコン2025)

NHK提供

小・中・高の部門ごとに行われる全国各地での地区コンクール、全国8ブロックでのブロックコンクールを経て、10月に全国コンクールを開催。さらに、今年のNコンでは歴代の課題曲の中から好きな1曲を選んで合唱動画を投稿して応募する新企画「Nコンフェス 課題曲MV部門」も開催する。