放送部などで活動する高校生が作品制作やアナウンスなどで日本一を目指す第72回NHK杯全国高校放送コンテスト(通称:Nコン、全国放送教育研究会連盟・NHK主催)の全国大会が7月22日から24日まで行われ、6部門の優勝者・優勝校が決まった。(文・写真 椎木里咲)
コンテストはアナウンス、朗読、ラジオドキュメント、テレビドキュメント、創作テレビドラマ、創作ラジオドラマの6部門で実施された。都道府県大会には1357校1万2551人が参加した。

-
【アナウンス部門】
- ▽優勝 榎本杷留(青森・八戸聖ウルスラ学院高校3年)
- ▽準優勝 中村美咲(広島・尾道東高校3年)
- ▽優秀 熊川千絵美(長崎・五島高校3年)、吉木碧羽(愛知・椙山女学園高校2年)
-
【朗読部門】
- ▽優勝 只安遥都(長崎・長崎北陽台高校2年)
- ▽準優勝 荒牧優奈(熊本・済々黌高校3年)
- ▽優秀 青野杏珠(鹿児島・鹿児島純心女子高校3年)、須山心結(静岡・浜松市立高校3年)
-
【ラジオドキュメント部門】
- ▽優勝 北海道・札幌西高校「でこぼこ」
- ▽準優勝 宮崎・宮崎北高校「永遠の課題」
- ▽優秀 北海道・旭川東高校「ぷぅtoo」、宮城・仙台第三高校「囲われた[きょうだい]」
-
【テレビドキュメント部門】
- ▽優勝 兵庫・御影高校「落ちルンです」
- ▽準優勝 熊本・玉名高校「珈琲を淹れて」
- ▽優秀 北海道・札幌西高校「紡ぐ」、北海道・旭川永嶺高校「いただきます」
-
【創作ラジオドラマ部門】
- ▽優勝 鳥取・米子工業高等専門学校「弾丸の行方は」
- ▽準優勝 愛知・名古屋市立菊里高校「代行部(仮)」
- ▽優秀 北海道・札幌南高校「いろはと楓」
-
【創作テレビドラマ部門】
- ▽優勝 福岡・鞍手高校「猪突盲信」
- ▽準優勝 島根・浜田高校「今を生きる私たちだけど・・・・・・」
- ▽優秀 東京・錦城高校「青い影の選択」
ラジオドキュメント部門・発達障害の当事者に取材
北海道・札幌西高校「でこぼこ」
同校に通う発達障害の生徒に取材をした作品。「小学校、中学校、高校と上がるにつれ、『できること』と『求められること』の差がある」と気づき、自身を「クズだ」と考え高1のときにうつ病を発症。
しかし、「失敗を認めてくれる友人たち」と出会い、状況が好転。探究活動で「発達障害」を取り上げ、校内でどんな悩みも打ち明けられる生徒間のコミュニティー「でこぼこフレンズ」を発足させた。
発達障害当事者の気持ちを丁寧に引き出し、周囲の生徒や先生など多くの人に取材を重ねて制作された。
テレビドキュメント部門・「落ちない黒板消し」を作るには?
兵庫・御影高校「落ちルンです」
「黒板消しを置く黒板の『溝』が狭いのはなぜ?」という「学校あるある」に迫った作品。授業中など、少しの衝撃で「溝」から落下してしまう黒板消し。黒板メーカーや黒板消しメーカーに取材を重ね、謎をひもといていく。
加えて「どうしたら『溝』から黒板消しが落ちなくなるか」を追求し、「溝」にクリップを取り付けたり、細い黒板消しを自作したり、マグネットを取り付けたりと工夫を重ねた。身近な出来事を探究した本作に、会場からも大きな歓声が上がった。
創作ラジオドラマ部門・ゲームの世界が戦争につながる
鳥取・米子工業高等専門学校「弾丸の行方は」
eスポーツに打ち込む男女が主人公。2人は異なる国に暮らすが、オンライン上で仲を深め、コンビを組んで世界大会で優勝。だが、男性が兵役を課せられ、戦争へ向かう。
一方の女性は、大手のゲーム会社から戦闘をモチーフにしたゲームのテストプレーヤーとして参加するよう誘われる。しかしゲーム会社の目的は、女性の腕前を二足歩行ロボットにプログラミングし、男性が兵士として参加している戦争に活用することだった。
「ゲーム」という題材を用いて、戦争を身近に感じさせた。
創作テレビドラマ部門・モールス信号でカンニング!?
福岡・鞍手高校「猪突盲信」
舞台は「情報」のテストが行われている教室。主人公の女子生徒は、問題用紙を読むもののまったく答えが浮かばない。そんなとき、近くの男女が、何やら「モールス信号」を使ってカンニングをしていると悟る。2人のモールス信号を盗み聞き、順調に答えを埋めていく女子生徒。しかし他のクラスメートもモールス信号を使い始め、どの答えが正しいか分からなくなって……。
AIが台頭するこの時代に、「自分の頭で思考する大切さ」を説いた作品。男女がモールス信号で愛を伝えあうなど笑える場面も多く、会場は笑いの渦に包まれた。