小顔効果を期待できる「触角ヘア」は、女子高校生の間で人気のヘアスタイル。一方で、校則に抵触したり、面接官からの印象が良くなかったりと、大人たちにウケが悪いようだ。国分中央高校(鹿児島)放送部は、触角ヘアを取りあげたテレビ番組を制作。実際の「大人ウケ」やいかに。(文・中田宗孝、写真・学校提供)
小顔になれる「触角ヘア」は女子高校生の定番
「触角ヘア」。それは前髪の横の髪を伸ばし、顔のラインに沿うように垂らした髪型のことだ。小顔に見えるとされ、国分中央高校放送部が制作したテレビ番組取材によれば「令和のJKはこぞって触角ヘアを作る」という。
「本当に触角ヘアをすると小顔になれるの?」。部員たちはヘアメイク専門学校の講師に尋ねると、「触角を出すことにより小顔効果や顔の輪郭をぼかすメリットがあります」とのコメントを得た。触角ヘアの小顔効果は、専門家のお墨付きだ。
触角は校則違反、服装検査の日はピンで留め
だが、手放しで喜べない事情もある。触角ヘアは、大人たちからのウケがすこぶる悪い。事実、同校の校則には「前髪を垂らすときは、眉の端までは切りそろえ、そこから横の邪魔な髪はピンで留める」と記載されている。「横の邪魔な髪」は触角ヘアを指すが、部員は「邪魔とはものすごい言われようである」と憤りを隠しきれない。
服装検査日には、女子生徒はヘアピンで触角を「収納」して対抗する。その「仮の姿」で検査を無事パスすると、すぐさまトイレに駆け込み、再び触角を出すのが常だ。
番組内では、進学・就活用の証明写真に使う「完全収納型」のヘアスタイルも紹介。完全収納型は触角のみならず、前髪もおでこ全体が見えるように「収納」する「偽りの姿」だ。この髪型で普段の学校生活を送る女子は皆無だという。
大学や企業へアンケートを実施、4割が「気にならない」
「触角ヘアはそんなに悪い印象を与える髪型なの?」
この疑問を解消すべく、大学や専門学校の面接官6人、一般企業の採用担当者4人の計10人へアンケートを実施した。アンケートは「触角ヘアの女子高校生の写真」を載せ、髪型について気になることがあるかを問う内容だ。結果、髪型に関して気になることが「ある」との返答が全体の60%にのぼった。「前髪が長い」「面接の髪型としては好ましくない」、ずばり「触角ヘアが問題」だと明記した面接官もいた。
一方で、「髪型は問題ない」「髪型ではなく人間性を重視」との声が40%あったのを忘れてはならない。部員たちは、高校生の進路に携わる大人たちの髪型に対する認識が少しずつ緩和しているのを実感しつつ、「面接時には『清潔感』のある髪型が望ましい」と提案した。
番組のエンディングであらためて問う。「触角を出して面接に行きますか?」と。その答えは「もちろん……収納します!」
小顔よりも手に入れたいのは「合格」。これも偽らざる女子高校生の本音なのである。
Nコンで優秀賞を受賞、「字幕テロップ」にこだわり
窪田茉莉さん(3年)と榎園奈桜さん(2年)が制作したテレビ番組「触角問題」は、7月、放送部の全国大会「第71回NHK杯全国高校放送コンテスト」(通称:Nコン、全国放送教育研究会連盟・NHK主催)テレビドキュメント部門で、2校のみが受賞する優秀賞に選ばれた。
触角ヘアというユニークな題材は、部員間の話し合いの中で挙がった。「学校の校則が見直された時期が番組テーマ決めのタイミングと重なり、女子の髪型に部員の関心も集まりました。私自身、『触角ヘア』が悪い印象なのかを調べたい好奇心が湧きました」(窪田さん)。
番組内で効果的に使われる、窪田さんが手掛けた字幕テロップは秀逸だ。映像内容に合わせて文字の大きさを細かく変え、画面上から文字が降ってきたり、飛び出したりと、視聴者を楽しませる工夫を凝らした。制作メンバーの榎園さんは「(窪田さんの)字幕テロップが消え、次の映像に切り替わるタイミングがすごく上手なんです。動画編集の参考にしています」と話し、後輩部員の制作意欲をも刺激した。
いざカメラを前にすると、緊張から言葉に詰まる生徒は意外に多い。「緊張が映像から伝わってしまうと、肝心のコメント内容が視聴者に届きにくいんです。そこでインタビュー本番前から既にカメラを回しておきます」(窪田さん)。すると、リラックスした表情で語る生徒の映像が撮影できるという。
自身も触角ヘアをする榎園さん。「頭髪検査や面接、TPOにあわせて清潔感のある髪型をするのが良いと思います。触角ヘアは、顔の面積を減らせるので今後もやります(笑)」
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国分中央高校 放送部
創部年不明。部員16人(3年生6人、2年生4人、1年生6人)。放送部室や生徒会室で週5日活動。「第68回NHK杯全国高校放送コンテスト」ラジオドキュメント部門優秀賞。今年は同大会ラジオドキュメント部門「オトコがほしい!」でも優秀賞受賞。