東京大学には長く、東大の女子学生の加入を拒み、東大男子と他大の女子のみで運営するサークルが存在してきました。近年、そのおかしさを指摘する声が高まっていますが、なぜ東大生は性別による差別を続けてきたのでしょうか。この問題を研究し、1月に卒業論文としてまとめた藤田優さん(東京大学教育学部比較教育社会学コース4年)に、研究で明らかになった「差別を生む構造」を解説してもらいました。

東大女子に門戸を開かないおかしさ、大学側の指摘にも改善なく

皆さんは、「東大女子お断り」サークルについて知っていますか。これは東京大学において「東大女子」の加入を禁止し、東大男子と他大学の女子のみで構成されるインカレサークル(複数の大学が合同で参加するサークルのこと)のことです。

東大が主催するサークルにも関わらず、性別を理由に東大女子の加入を拒否している事に対し、おかしさを感じる声は少なくありません。批判の声を受け東京大学本部学生支援課は2016年3月、「性別などで東大生の加入を制限するサークル」に運営改善を求める文書を発表しました。しかし実際に運営改善した例はほとんどありませんでした。特にスポーツ系のインカレサークルで、東大女子に対し門戸が開かれていないというのが現状です。

また興味深いことに、「ワセジョ(早稲田大学の女子学生)お断り」という言葉に見られるように、特定の大学の女子が入部を拒否されるという現象は早稲田大学や京都大学でも起こっています。

私たち東大女子を拒絶するサークルの中で何が起きているのか

「東大のサークルなのにどうして入れないの?」という疑問を、筆者もまた1年生の時に感じていました。しかし入学当初はおかしいと思ったものの、東大生だけで構成される「学内サークル」の存在に救われ、学年が上がるにつれて「そういうものか」と流すようになっていました。自分達を拒絶するインカレサークルに対し、“東大の男子と他大学の可愛い女子が集まってキャッキャと楽しく過ごす場所”という悪いイメージすら抱いていました。

 
東京大学の合格発表(2018年)

しかし、実態はどうなのでしょうか。ふと何も知らないまま卒業するのは惜しいと感じ、卒業論文という形を通じて、「東大女子お断り」を掲げるインカレサークルの内部で何が起こっているのか明らかにしたいと考えました。

調査方法としては、東大インカレサークル(テニスサークルと比較の対象としてバドミントンサークル)に所属する男女17人と学内サークル(テニスとバドミントン)に所属する男女9人へのインタビューに加え、その中の1つのインカレテニスサークル(以下インカレテニサー)の練習を2カ月間見学(参与観察)させて頂きました。

その中で、インカレテニサーにおいて男子が女子より優位に立つといういびつな構造が多く見受けられました。そこで、まず東大インカレテニサー内の男子優位の構造がなぜ崩されることなく維持され続けているのか、という問い立て、分析を進めました。

決定権を持つ幹部は男子、ご飯係は女子という「男尊女卑ルール」

インカレテニサーにある男子が女子より優位に立つ構造を、以下では「男子優位のジェンダー秩序」と呼びます。

その特徴としては、まず「男子中心運営」が挙げられます。これはキャプテンや係の長など幹部職には男子が就くという決まりのもと、サークルが運営されることです。女子のサポートを受けながら男子が決定権を持ちサークルを運営するという構図は、非常に男子優位と言えるでしょう。

また、複数のインカレテニサーで「男尊女卑(だんそんじょひ)ルール」といったジェンダー差別が観察されました。

「男尊女卑ルール」とは男子は力仕事、女子はご飯系の役割を務めるという決まりのことです。テニスコートの整備やボールの管理、球出しなどは男子がやると決まっている一方で、合宿での配膳、男子の先輩の水くみや飲食店のドアを開けるのは女子、特に1年生の女子の役割とされています。

こうしたサークルでは男女がまざって同じ練習メニューをこなしています。男子だからという理由で男子だけがコートの後片付けをするのには違和感を覚えます。逆も然りです。ご飯は皆が食べるものなのに、なぜ女子が男子のご飯の世話をするべきと決められてしまうのでしょうか。