1月、高校生たちが考えたビジネスプランを競う全国大会「第7回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)の最終審査会が東京大学で行われた。ファイナリストのプランを紹介する。(中田宗孝、写真は事務局提供)
救世主はバーチャルアイドル 金光学園高校
金光学園高校(岡山)の3人は、岡山県笠岡諸島の白石島に伝わる盆踊り「白石踊」に注目した。
白石踊は、国の重要無形民俗文化財で、800年もの伝統があるが、後継者不足が深刻な問題となっている。そこで、3人は後継者を育成し、知名度アップが図れるビジネスプランを紹介した。
若い世代の人気を得たい
白石踊のPRのため、「バーチャルアイドル」をうまく利用できないかと考えた。そこで、和田雄喜君(2年)が伝統芸能バーチャルアイドル「白石舞」を制作し、白石踊の動きをインプットさせた。白石舞は、島の美しい風景を想像しながら作ったという。
Vtuberとして活動する白石舞が、若い世代からの人気を得ることで、白石踊の広く知ってもらうことにつなげるのが狙いだ。
3人も、実際に白石踊の練習会に参加して、約2カ月で踊りを覚えた。
和田君は、「みんなで輪になって楽しく踊れる『白石踊』を、バーチャルアイドルを通じて知ってもらえれば」と夢を語った。
柿渋使ってエコな紙袋を考案 木津高校
木津高校(京都)の2年生3人は、地元の特産品の柿渋を有効活用するビジネスプランを考えた。3人は、2年連続で同大会ファイナリストに選ばれたメンバーだ。
地元の特産品を生かして
現在、プラスチック製のレジ袋(買い物袋)は、世界的に使うことを規制する方向で進んでいる。そこで、柿渋に含まれる「カキタンニン」を染み込ませた紙袋を、プラ製レジ袋の代替品として活用するプランを発表した。
レジ袋と比べて、紙袋は水に弱いという問題点があった。だが、防水効果のあるカキタンニンであれば、それを解決できるという。
プレゼンは、来場者を楽しませるマジックショー仕立て。普通の紙袋と柿渋を塗った紙袋にそれぞれ水を入れて、強度を比較してみせた。
すると、普通の紙袋はすぐに破れたが、柿渋を含ませた紙袋は水に耐えた。「どうプレゼンしていくかは、メンバーでたくさん案を出して、練習を重ねました」(伊藤一紗さん)
発達障害の子どもの生きづらさをなくしたい 名城大学附属高校
森本陽加里さん(愛知・名城大学附属高校2年)は、審査員や来場者の胸を打つプレゼンを披露した。提案したのは、発達障害で学校生活を普通に過ごせずに悩む子供たちの“生きづらさ”をなくすための支援アプリだ。
このアプリを活用すれば、発達障害児の保護者、学校(教員)、専門家の情報共有がスムーズにできる。また、過去の診断カルテや支援ノウハウをサンプルとして蓄積することも可能だ。
自分自身のつらい過去を乗り越えて
森本さんは、小学生の頃に発達障害と診断された。プレゼンでは、学校のチャイムの音で体が痛くなったり、先生の声が聞き取れずに普通に授業が受けられなかったりなど、自らの体験に基づいたエピソードを告白した。
「学校を“生きづらい場所”と思っている発達障害児を絶対に救いたい」と強い決意を語り、大きな拍手を受けた。現在、森本さんは周囲のサポートを得ながら友人たちと楽しい学校生活を過ごしているという。
今回のビジネスプランを考えることは、自身のつらい過去と向きあう痛みが伴った。「とてもつらかったです……。それでも発達障害児が抱える苦しみを知ってほしかったし伝えたかった」(森本さん)
プレゼンを聞いた来場者から「感動した」「泣いてしまった」と声を掛けられ、「このビジネスを必ず成功させたい」と、あらためて力をみなぎらせた。
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そのほかのファイナリスト
旭川農業高校(北海道)「農業用アシストカートで地域農業の未来を考える」
高齢者の農作業の軽減を目指し、100キログラムの積載が可能な農作業用のアシストカートを開発・販売するプランを提案した。
同機には自動追尾機能も搭載。作業場所までカートが自動でやってくるため「作業効率のアップにもつながる」と力説した。
桐朋高校、開成高校(両校とも東京)「いつでも備える!シェアリング防災」
オリジナル防災アプリを開発し、「シェアリング防災」と命名した。
このアプリを使用するユーザーが、災害の発生場所や避難所情報を投稿する。
ニュースなどでは詳細に把握できない、自分の暮らす地域の被害状況をピンポイントで知ることができる。
市川高校(千葉)「カメラで介護」
介護施設に入居する高齢者のストレスや、自律神経の状態を見えるようにできるシステムを開発。
要介護の高齢者が、測定機を直接身につけるといった心理的な負担を感じないよう、日常生活の中で必ず立ち寄る洗面所にストレス測定機を設置するプランを考えた。
横浜市立南高校(神奈川)「GREENなBEANが熱中症対策にEE~安心して運動ができる世界に~」
ベトナム産の緑豆を活用し、熱中症を未然に防ぐパウダー食品を開発。
緑豆には発汗を促す効果があり、熱中症対策にはもってこいの食材だ。
緑豆を粉末状にしたパウダー加えた料理で熱に強い体を作り、熱中症を未然に防止するアイデアを提案した。
岐阜農林高校(岐阜)「引き出せ地域の底地辛!~幻の徳山唐辛子で七次産業化~」
ダムの底に沈んだ地元の村の特産品「徳山唐辛子」に着目。この唐辛子の苗や、唐辛子入りの加工食品を農家に向けて販売。徳山唐辛子の利益で得た資金を、農家の作物を荒らす鳥獣被害対策費に充てる産業サイクルを提案した。
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