プラスチックごみによる海洋汚染が深刻化している。食物連鎖を通じて人間の体内にプラスチックがたまる恐れもある。洗足学園高校(神奈川)の1年生4人は、魚が誤って食べることのないポリ袋を開発するビジネスプランを提案した。全員が魚好きだ。(中田宗孝)

魚が大好き、元気にしたい

渡邉心海さんを中心に集まった4人が、昨年7月から活動を始めた。

全員が魚好きの共通点があったことから、魚たちが元気に過ごせる社会を目指すビジネスを考えることに。魚が元気であれば、それを食べる人間への健康被害を防ぐことにつながるためでもある。

試作したポリ袋を手にする洗足学園高校の生徒たち

商品名はエネルフィッシュ

魚が嫌う味の成分を含んだポリ袋(買い物袋)を開発し、コンビニやスーパー向けに大量販売するビジネスモデルを考えた。

エネルギッシュな魚を取り戻したいという思いを込めてポリ袋の商品名を「エネルフィッシュ(ENERFISH)」とした。

魚が苦みを感じる化合物を使って

エネルフィッシュの特徴は、人体に無害で、魚が苦味を感じる有機化合物「デナトニウム」を含んだポリ袋という点だ。

彼女たちが調べたところによると、海のゴミの中で特に多いポリ袋をエサと勘違いして多くの魚が誤食しているという。

デナトニウムを含ませたポリ袋であれば、魚の誤食を防げるのではないかと考えた。

真庭唯花さんは「この物質にたどり着くまでが大変でした」と振り返る。「当初は魚が嫌う“匂い”に目を向けていたんですが、識者の方からデナトニウムを教えていただき、魚にとって嫌いな“味”に着目できたんです」

プレゼンする洗足学園高校の生徒たち(事務局提供)

大学と共同し実験

東京海洋大学と協力して、魚にデナトニウムを含んだエサを与える検証実験をしてみると、通常のエサよりも食べる割合が大きく減少する結果を得て、自信を深めた。

複数の企業と新たなポリ袋の商品開発を進め、エネルフィッシュの試作品が完成。「自分たちのアイデアが形になった瞬間、みんなで喜びました」(山﨑柚芽さん)

環境問題を考えるアイデアだと高評価

1月、高校生たちが考えたビジネスプランを競う「第7回高校生ビジネスプラン・グランプリ」(日本政策金融公庫主催)の最終審査会が東京大学本郷キャンパスで行われ、準グランプリを得た。

審査員たちは「(日常的にポリ袋を使う)消費者の習慣を大きく変えることなく、環境問題に対してインパクトのあるアイデア」「魚の好きなものではなく嫌いなものから仮説を立てていく発想が素晴らしい」と、柔軟な着眼点を高く評価した。

渡邉さんは、「より多くの人や企業に『エネルフィッシュ』を知ってもらう活動を続けながら、商品化を進めていければ」と、今後の展望を語った。

プレゼンする洗足学園高校の生徒たち(事務局提供)