■サラブレッド
演劇界に昨秋、とんでもないサラブレッドがデビューした。2013年11月、大阪松竹座の「松竹新喜劇特別公演」で正式に劇団員として舞台に立った藤山扇治郎さん(26)。昭和の喜劇王・故藤山寛美さんを祖父に持ち、女優・藤山直美さん(54)は伯母にあたる。6歳の時に故中村勘三郎さんの歌舞伎で初舞台を踏み、子役として活躍した。
■高校、大学は学業専念
しかし、中学卒業後は「学業に専念したい」と華々しい子役を封印。京都・東山高校から関西大学へと進んだ。
「あの時、普通に勉強し、友達と悪ふざけしては笑い合っていたから今の自分がいるんです」ときっぱり言う。今回の舞台も、多くの友人が客席で見てくれた。「アイツらね、平気でダメ出ししてくるんです。でも、これがホントにありがたい」と明かした。「大人になると……、というか特に芸能界って『上っ面』の付き合いが多くなってしまうんですよね。どんなお芝居でも『良かったよ』と褒めてくれたり。それはサラリーマンの人でも同じかもしれないけど、心の底から注意してくれたり、正直な感想を言ってくれたりすることが、どれだけありがたいか」と熱く語る。損得勘定を抜きにした友情が一番の「先生」というわけだ。
■常識、謙虚さ身に付けた
大学時代は学業の傍らコンビニ、薬局でアルバイトもした。普通にデートもした。「そこで一応の常識も学べたと思います」
今年は2月に大阪松竹座で「道頓堀喜劇祭り」、7月には劇団にとって19年ぶりの東京公演も待つ。「ボクなんてまだまだですが、全てのことに感謝して精進したい」。この謙虚さもまた、学生時代に自然に身に付いたものなのだろう。 (土谷美樹)
ふじやま・せんじろう: 本名・酒井扇治郎。1987年1月21日、京都府生まれ。母は故・藤山寛美さんの5女。大学卒業後に上京し、本名で俳優としてドラマ「赤い糸の女」などに出演。昨年11月、現在の名前にして、祖父が築き上げた松竹新喜劇に正式入団した。