2026年度入試の一般選抜シーズンが迫ってきている。私立大学の志望動向について、河合塾教育研究開発本部で主席研究員を務める近藤治さんに聞いた。共通テスト方式選択者、都市部の大学を目指す受験生が増えている。(野村麻里子)

国公立大の私立併願者が共テ方式で増加

私立大において顕著なのは、一般方式選択者は前年比99%だったのに対して、共通テスト方式選択者は110%と増加している点だ。「特に、国公立大の志望者が私立の併願を増やしていると見られます」

 

主要大学をグループ化し傾向を見ると、早稲田・上智・東京理科112%、MARCH116%、日東駒専117%、成成明國武116%と、共通テスト方式志望者の増加が顕著。近畿圏も、関関同立117%、産近甲龍114%、中部圏は南山・愛知・中京・名城120%。「日本全体で地方の私大の志望者は減少傾向ですが、エリア内の私大のトップ層は増えています」

 

女子受験生の進路が多様化

首都圏の女子大のうち13大学は、一般方式98%、共通テスト方式98%と減少。「女子の進路の多様化の表れです。一昔前は、女子大を選び文系学部で教養を身につけたり、実学として家政科で学んだりする選択が多かったですが、今は本当に自分のやりたい分野を志望していると言えます」

都市部の大学目指す受験生増

地区別では、東京106%、近畿102%のみ増加し、その他の地域は東北90%など減少している。「コロナ流行期は、地方から東京や近畿の大学を受ける受験者が減りましたが、今は逆で、東京・近畿の大学を目指す受験生が大幅に増え、コロナ禍以前よりも多い数値です。都市部の大学への集中化が進んでいます」

 

難関大に人気集中

学部系統別で見ると、法・政治、経済・経営・商などの社会科学系や理工農学系が増えている。法・政治109%、経済・経営・商107%、理103%、工104%、農104%。医療系は、医学科103%、歯学102%と微増し、薬学や看護は96%と減少している。

国公立も同様の傾向だが、私立ではより増減が顕著に表れている。「私立は、経済・法学部を主軸にした社会科学系の学部構成である場合が多いです。そのため、国公立受験者が私立併願を増やす際に経済・法学部などを選ぶ割合が高くなるためと考えられます」

 

傾向に振り回されず「参考程度」に

志望動向を踏まえ、受験生は秋以降何を意識すべきか。「あまり人気度など傾向に引っ張られないほうがよいです。周りに流されることなく、自分が志望したい学部を変えずに、準備をしていきましょう」

そのうえで、今後受ける模擬試験で志望者の傾向はどうとらえればよいか。「例えば、志望している大学や学部が増加傾向だと結果が出れば、ちょっと厳しくなるかもと覚悟を持って最後の追い込みをしていきましょう。反対に志望者がとても減っていても、楽していいかと思ってはダメです」。あくまで参考程度で見て、本番に備えていくのが適切なデータのとらえ方だ。 

 

こんどう・おさむ 

学校法人河合塾 教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。情報発信や講演も多数実施。