中村慈(いつみ)さん(北海道・苫小牧南高校3年)の彫刻作品「アインシュタインローゼンの橋」を紹介します。トイレから頭がのぞくインパクト大のこの作品は、全国高校総合文化祭(かがわ総文祭2025)の美術・工芸部門に出展されました。作品へのこだわりや制作中のエピソードを聞きました。(文・写真 椎木里咲)

「トイレが大好き」の気持ちを込めた

―作品のテーマを教えてください。

私はトイレが大好きなんです。安心できるし、素でいられるし、自分を受け止めてくれる場所だと思っているので、作品にしたいと思いました。便器の中に沈んでいるのは自分です。好きだから入っています。

タイトルの「アインシュタインローゼンの橋」は、二つの離れた領域を結びつける時空構造、要するに「タイムマシン」のようなものです。私にとってトイレは、ドアを開けて入れば違う世界に行ける感覚がする場所。まさに「アインシュタインローゼンの橋」なんです。

制作者の中村さん。大好きな「トイレ」をテーマに作品を仕上げた

作品は「自分の分身」

―こだわったり、工夫したりしたポイントは?

作品は「自分の分身」だと思っているので、自分の背丈とほぼ同じ大きさで作りました。「スタイルフォーム」という発泡スチロールに似た素材を削って作っているのですが、少し削っては全体を見るのを繰り返し、左右対称になるようこだわりました。

―難しかったり、大変だったりしたのはどこですか?

自分の想像と違う色になった部分があります。例えば水の部分は青く塗っていたのに、和紙でコーティングした翌日にピンクになってしまったんです。青がよかったな、と思っていたら、顧問の先生が「これも味だよ!」と言ってくれて。今では私もピンク色がお気に入りです!

「素直」になって作品を作ろう

―制作中、印象に残っているエピソードはありますか?

立体作品を作るのは初めてだったので、何が正解か分からず不安だらけでした。でも先生や美術部の友達など、周りは優しい人ばかり。相談して作品を作っていくのが楽しかったです。

―上達のコツを教えてください。

作っているときの感情を大切にすることです。作品は自分の分身だと思っているので、自分の気持ちに素直に従えば、よい作品になるのではないでしょうか。