高校時代は、自己を確立し、将来について考え始めなければならないデリケートな時期。気分が落ち込む、イライラするなど、心の不調を感じたときの対処について、心療内科医の河合啓介先生に聞いた。

 

環境変化がストレスに

両親の不仲や離婚、家族の死などのつらい出来事があったときはもちろん、高校生の場合なら転居、進学、クラス替えなど生活環境が大きく変化したときにもストレスを感じやすい。

これらのうち一つなら乗り越えることができても、運悪く複数の要因が重なると心の不調をきたす場合がある。

心の不調の兆しは、イライラする、怒りっぽくなる、気持ちが落ち込む、物事をおっくうに感じるなど。不眠や食欲低下、過食、便秘、下痢、めまい、耳鳴り、肩こり、頭痛などの身体症状として現れることもある。

2週間続いたら鬱(うつ)かも

個人差もあるが、これらの状態が2週間以上、一日中続くようなことがあれば鬱うつの可能性がある。まずは家族や友人、学校の先生、スクールカウンセラーなど、信頼できる人に相談してみよう。

全国各地域にある精神保健福祉センターに電話するのもいい。必要に応じて、適切な医療機関を紹介してくれる。「近年、医療機関でも若い方たちに対する精神的なケアが重視されるようになっています。『こんなことで』とか『分かってもらえるはずがない』と思うかもしれませんが、専門家の知恵を借りることで前進することもある。それを分かっておいてほしいと思います」

気持ちを切り替えれば回復

心の不調を感じても、気分転換によって解決することも多い。音楽を聴く、運動をする、友人に話すなど、自分に合った気分転換の方法を複数持っておきたい。気持ちを切り替えることができたらしめたもの。通常なら数日間で回復する。

気を付けたほうがいいのは、インターネットによる気分転換。夜ふかしなどの生活リズムの乱れが不調を悪化させるだけでなく、度を過ぎると依存症にもなる。

高校生世代には、不調をきたしにくい心の持ち方と、心の不調をきたしてしまったときに起き上がる力、その両方が必要だ。「心のトラブルを抱えたとき、自分がどのように考え、どんな行動をしがちなのか、自分の癖を知っておくこと。そうすることで早期に不調を感知し、対策を取ることができます」 (野口涼)

河合啓介先生

 

かわい・けいすけ 日本心療内科学会理事。国立研究開発法人国立国際医療研究センター国府台病院心療内科診療科長。