隣国の韓国との関係が「最悪」と表現されるほどになっている。元徴用工問題(メモ参照)に対抗する形で日本が輸出管理上の優遇対象から韓国を外し、これに反発した韓国政府は日韓の軍事情報包括保護協定(GSOMIA)(ジ ーソミア)を破棄した。対立がさらに悪化するのは避けられない状況で、泥沼化の様相だ。

米国は「失望」を表明

日韓のGSOMIA破棄は安全保障上の協力の大前提となる信頼関係が崩れたことを意味する。北朝鮮などの脅威を前に、日米韓3国を軸としてきたアジアの安保体制が大きく揺らぎ、米政府は「失望」と「懸念」を表明した。

韓国政府はGSOMIA破棄の理由について、日本が輸出規制を簡略化できる輸出優遇対象国から韓国を除外したことで両国間に安保上の問題が生じたことを挙げた。

GSOMIAは防衛上の秘密情報を円滑に交換する枠組みで、韓国とは2016年に締結した。対象は軍事技術だけでなく、戦術データや暗号情報など広範囲に及ぶ。協定の有効期間は1年で、期限の90日前までに相手に終了の意思を伝えなければ自動延長される。日本は米英仏などと同種の協定を結んでいる。

観光や民間交流にも影響

 

日韓関係は政府間にとどまらず、航空便の休航や子どもたちを含む民間交流の中止にも波及。韓国内では日本製品の不買運動が広がり、訪日韓国人数も落ち込んでいる。昨年、韓国からの訪日客数は約750万人で全体の約4分の1を占めたが、今年7月は前年同月比7.6%減だった。

MEMO 元徴用工問題

朝鮮半島出身の元労働者や遺族が日本の植民地時代に労働を強いられたとして賠償を求めている問題。韓国最高裁は昨年、日本企業に賠償を命じる判決を確定、企業は韓国内の資産を差し押さえられた。日本政府は請求権問題解決を確認した1965年の日韓協定に違反すると非難している。