未熟な自分自身に悩んだ時、誰に相談するだろうか。子どものころから芸能界で活躍する浜辺美波さんは、一人で思い悩んでしまうタイプだという。葛藤の中に立ちすくむ高校時代の浜辺さんを救ったのは、先輩役者からの一言だった。 (中田宗孝)

はまべ・みなみ 2000年8月29日生まれ。石川県出身。2011年、女優デビュー。主な出演作は、映画「君の膵臓をたべたい」「センセイ君主」など。19年公開の映画「屍人荘の殺人」、20年8月公開の映画「思い、思われ、ふり、ふられ」への出演を控える。

いっぱい悩む時期は大切

小学生から芸能活動を始め、高校時代も女優業に青春を注いだ3年間だった。多くの映像作品に出演して演技の経験を重ねても「高校生のころは今以上に自分の未熟な演技力を痛感する現場が多くて……」と思い悩んでいた。「私自身、誰かに悩みを打ち明けるタイプではないこともあり、自分
一人で何とか解決策を見つけようともがいていました」

もんもんと抱えていた演技の悩みは、撮影現場での先輩役者たちからの言葉で少しずつ氷解したという。「ある先輩役者さんからいただいた『女優が女優たらしめるのは自分の意識だけ』という言葉には感銘を受けました」。女優業は、特別な免許が必要な仕事ではない。「だからこそ『私は女優の仕事をしているんだ』という心持ちが大事。普段からそれを心に留めて行動すると、演技も良い方向に変わるんです」

悩める高校時代を過ごした体験から、高校生たちに「いっぱい悩む時期も大切」と伝える。「目の前の悩みにきちんと向き合ってください。その経験が卒業後の進路や将来の夢、新たな道を開く第一歩だと思います」

一言のせりふに感情込め

アニメ映画「HELLO WORLD」では、ヒロインの女子高校生の声を担当した。声を吹き込むキャラクターが劇中で多用するせりふの表現に気を払ったという。「主人公の男子高校生に向けて、『そうですね』というせりふを何度か言います。物語の前半と後半では、この言葉に込めた彼女の思いが全然違うんです。そこは注目してみてください」。主人公とヒロインの心の距離感を意識しながら「そうですね」の声を収録した。「あるシーンでは素の自分に近い声色で。別のシーンでは柔らかみのある声で。一方で、何を考えているのかつかめない無機質な『そうですね』もあります」

HELLO WORLD

 

男子高校生の直実(声:北村匠海)の前に、「10年後から来た自分」と名乗る青年ナオミ(声:松坂桃李)が現れる。未来の自分が語るには、クラスメートの瑠璃(声:浜辺美波)と恋仲になるが、彼女は事故で命を落とすという。直実は、瑠璃の運命を変えるために奔走するが……。配給:東宝。9月20日から全国公開。©2019「HELLO WORLD」製作委員会