枚方高校(大阪)生物飼育部は、絶滅が危惧されている生き物などの人工繁殖や生息場所の保全に取り組んでいる。部員はみな、生き物が大好き。「多くの人に自然について関心を持ってもらいたい」と活動に励んでいる。(文・写真 木和田志乃)
一匹ずつ餌を口元へ
「カスミサンショウウオ」の幼生を約50匹飼育している。絶滅の恐れのある野生生物の情報をまとめた「レッドリスト」に、大阪府からは「絶滅危惧I類」、環境省からは「絶滅危惧II類」に指定されている。
一昨年、府内でカスミサンショウウオ1ペアを捕獲し、飼育方法を自然保護団体や大学の研究者に聞いて育て始めた。
共食いを防ぐため、プラスチック容器に1匹ずつ分け、ピンセットで餌を口元へ運ぶ。5~6人で30分以上かかる作業だ。水温上昇に弱いため、温度管理しながら水質をきれいに保つなど、生育する場所に近い環境づくりを心掛けている。
育ったら野生に戻す。産卵には水深15センチの環境が必要だ。産卵地に定期的に出向き、泥で埋まらないよう保全する。
カワバタモロコ(日本古来の魚)やゲンジボタルなども飼育している。
「親の気持ち」になり飼育
生き物の世話や観察は担当を決めず、全員で行っている。部長の杉林直人君(3年)は「生き物と人間は意思疎通ができない。だからじっくり観察して、ちょっとの変化でも気付いてあげることが大事」だと、全員が親のような気持ちで世話している。
公文陽太(ひなた) 君(2年)は「入部後にダイビングの免許を取り、海中の魚の動きや隠れている場所を見ました。生き物の飼育に生かせている。飼育の基本は観察」だと目を輝かせる。
野草調理に小エビすくい
活動は生き物の飼育のみにとどまらない。保護犬の譲渡会の手伝いや祭りで小エビすくいのブース出展、野草の調理など多岐にわたる。台湾の高校生が来校した時には、校内の畑で栽培した藍やコウゾで染め物や和紙づくり体験を行うなど、自然に親しむ機会を作っている。
杉林君は「生き物がいる場所に実際にいる場所に赴いて、生き物はさまざまな条件が重なって、その場所に住めていることに気付きました。価値観が180度変わりました」と話す。「自分たちの活動が、生き物の生息環境の変化に目を向けるきっかけになれば」と願っている。
- 【部活データ】2017年創部。部員18人(3年生2人、2年生8人、1年生8人)。活動日は平日放課後18:00まで。2017年、大阪府生徒生物研究発表会で優秀研究賞。2018年3月放送のテレビ東京「緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦」に協力。番組を見て入部を希望した部員もいる。
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