ウオー、ウオー。田んぼなどに生息するウシガエルは、繁殖期になると大きな声で鳴く。「うるさい」と苦しむ地域住民の力になりたいと、篠山東雲(ささやましののめ)高校(兵庫)自然科学部は外来生物駆除活動に取り組んでいる。捕まえるだけでなく、「食べる」など活用法も模索中だ。

「ウシガエルがうるさい」地域住民の声から調査開始

活動のきっかけは「篠山城の堀周辺の住民がウシガエルの鳴き声がうるさいと困っている」と、市が学校に情報共有したことだ。2019年当時「課題研究」のテーマを探していた部員が先生から実情を聞き、ウシガエルの駆除に着手。以来、部で引き継ぎ、調査と捕獲を続けている。

部長の三木さん(写真・学校提供)

「今は月に1回のペースで、外来生物の捕獲を行っています。ウシガエル以外にも、アメリカザリガニやブルーギルといった外来生物も捕獲しています」(部長の三木大志さん・3年)

外来生物が大幅に減少

捕獲には、定置網を設置して翌日に引き上げる方法や、箱型で一度生物が入ると外に出にくい網「もんどり」を10カ所に仕掛けて翌日回収する方法がある。

20年から24年にかけて、ウシガエルやアメリカザリガニの個体数は大幅に減少。例えば、篠山城堀の「東馬出堀」という場所におけるウシガエルの捕獲量は、20年は捕獲1回あたり4キログラムを超えていたのに対し、24年は2キロ強まで抑えられた。ブルーギルの数も減ってきている。その結果、在来種のモツゴやスジエビが増え始めたという。

「一度入った外来生物を生態系から完全に除くのは簡単ではありません。でも、継続すれば変化は見えてくると実感しています」

定置網を確認する部員たち(写真・学校提供)

外来種を「食べて」活用法を模索

捕獲した生物は駆除するだけでなく、活用方法も研究している。ウシガエルは足の部分をから揚げや天ぷら、焼き鳥風に調理。アメリカザリガニは尾の身を天ぷらに、ブルーギルは塩焼きにして試食した。

ウシガエルのから揚げ。鶏肉のような味わいだ(写真・学校提供)

「ウシガエルは白身魚のような食感で、味は鶏肉っぽくてまったく臭くなく、食べやすいです。アメリカザリガニを食べた友達は、『エビと同じ感じ』と言っていました」

調理法の改善も重ねてきた。ウシガエルは血抜きの処理を施すと臭みが減って、おいしく食べられるようになった。アメリカザリガニは1週間生きたまま水道水につける「泥抜き」をすると、エビとほぼ同じような味と食感になる。

ブルーギルは泥臭さが残りやすく、今後の課題だ。「特定外来生物は法律上生きたまま運べないので、泥抜きができないんです」

調理に使えない部位やオタマジャクシは乾燥させ、粉末にして肥料として活用する方法も試している。

写真3 ウシガエルをから揚げにして試食。捕獲してすぐ締めて血抜きをすると、臭みが感じられなくなった(写真・学校提供)

「ウシガエルの足は身が少ないので、から揚げもかなり小さかった。今後は肉をミンチにして、ハンバーグを試したいです」

地域の人と自然環境をつなぐ存在に

活動を続ける中で、地域住民からの反応にも変化が出てきた。捕獲活動をしていると、近隣住民から「鳴き声が減って静かになった」と話しかけられることがある。堀の近くにある保育園の園児や保護者、観光客が活動の様子を見学する場面も増えている。

「捕まえたウシガエルやアメリカザリガニを食べる活動が珍しいと思う。活動を楽しみながら地域の自然環境の保全にも貢献していると感じると、やりがいを覚えます」

生き物とふれ合いながら自然と向き合い、自ら考え、行動する力を磨いている。今後は、外来生物の調理法をさらに研究し、楽しみながら自然保護に貢献できる新たな形を探っていくという。