坂本裕紀さん(茨城・緑岡高校3年)は、学校の連絡が「紙ベース」で行われ、時間がかかっている点に課題を感じていた。「校内の情報共有をデジタル化したい」との思いから、アプリを開発。3学年の生徒約250人が利用している。
「時間割変更が分かる」アプリを開発
坂本さんは校内で使うアプリ「Campus Link Pro」を、学校の「課題研究」の授業の中で開発した。
緑岡高校では、教員が担当する授業時間に他の外せない仕事が入るなどした場合、他の教員と「授業交換」をする。「これまで、授業変更の連絡は教員が授業変更用紙に記入し、教室に掲示する『紙ベース』で行われていました。連絡までに多くの時間と労力を要していたんです」
授業変更の情報は、生徒それぞれが紙の掲示を見に行って確認しておかなければならない点に、課題を感じていたという。「校内の情報共有をICTで円滑に行えるようにできるアプリを作りたい」と思い、2年生の4月から開発を始めた。
教室を通るだけで出席記録
今は3年生の生徒280人のうち、約250人がアプリを使い、使い心地を試す「実証実験」の最中だ。
生徒たちは、「時間割の確認機能」や、無線装置を設置した教室の入り口を通るだけで出席が記録できる「デジタル出席記録機能」、その日の時間割や3週間分の授業予定が分かる「授業予定閲覧機能」、クラス内での画像共有機能を使っている。
利用者の使い方を分析すると、登校前や夕方に多く利用されていると分かった。20時に利用者のスマホへ通知を送ると、利用促進に効果的だと確認できた。常に新しい機能を考えていて、購買の商品の予約機能や、キャッシュレス機能を作るべく、実験中だ。
教員向けの機能も開発中
教員向けにも、アプリ上で授業変更を入力できる「授業変更入力機能」、交換可能な授業を探せる「授業変更検索機能」、生徒に授業や行事のお知らせが送れる「連絡事項伝達機能」を開発中だ。機能はほぼ出来上がっており、坂本さんが教員向けの実証実験に向けて調整を加えているという。
交換可能な時間割のリスト化に苦労
教員のスケジュールを把握し、交換可能な時間をリスト化したプログラムを組むのが大変だった。丁寧に構造を考え、エラーの発生と修正を繰り返したという。「特に、開発を始めたばかりの頃に発生するエラーやバグへの対応に苦労しました。今もトライアンドエラーの連続です」
初めは、校内で利用者が多いiOS版のアプリを開発し、続いてAndroid版も開発。Googleの「Firebase」というウェブアプリの開発サービスを活用して、データ保存やプッシュ通知などの送信ができるようにした。「生徒や教員の意見をふまえて、最初のバージョンから適宜アップデートを行っています」
「誰かのための課題解決」が楽しい
実証実験などを通して、利用者の生徒から「便利だよ」「ありがとう」といった感謝の言葉をもらえるのが、最大の原動力だ。「身近な課題に気づき、誰かのために解決する意義や楽しさを感じられました」
今後は自分の学校だけでなく、他校でも活用できるように展開したいと考えている。校内用アプリの型を企業向けに整えつつ機能を拡張し、学校以外での利用も目指している。「教育現場ごとに異なるニーズに対応できるよう、必要な機能を選んで組み合わせられるカスタマイズ性を高め、誰にとっても使いやすいアプリを目指します」


















